MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

文字サイズ
印刷する

メタンハイドレートからガスを生産する

ガス生産(ガスをとりだす)

メタンハイドレートを分解する

 地層内に固体として存在するメタンハイドレートは、そのままではエネルギーとして利用することはできません。エネルギーとして利用するためには、メタンハイドレートの結晶中に閉じ込められているメタン(天然ガスの主成分と同じ)を取り出す必要があります。

 一般的なガスや石油の井戸では、地下の圧力が高く、また液体や気体で存在することから、井戸を掘れば自ら噴出(自噴)し、ガスや石油を回収する(地表に取り出す)ことが可能です。一方、メタンハイドレートは地下では固体として存在し液体や気体とは異なり流動性を持たないため、単に井戸を掘っただけでは回収できません。そこで、何らかの方法により地下でメタンハイドレートをガスと水に分解し、回収する方法が検討されています。この手法であれば、在来型の天然ガス開発とほぼ同様の技術・機器・設備を用いてメタンガスを回収することが可能となります。

 低温・高圧の環境下で安定して存在するメタンハイドレートは、「温度を上げる」もしくは「圧力を下げる」ことで安定して存在できる条件(メタンハイドレート安定領域)から外れ、ガスと水に分解させることができます。現在我々が主に取り組んでいるのは、圧力を下げる「減圧法」と呼ばれる手法で、熱水等を地下に送り込んで温度を上げる「加熱法」に比べて設備もシンプルでエネルギー効率の観点からも優れていると考えられる手法です。

図1 メタンハイドレート安定領域図

図1 メタンハイドレート安定領域図
黄色い部分がメタンハイドレートとして安定して存在できる条件の領域。
この領域を超えると分解してメタンガスと水になる

減圧法の仕組み(メカニズム)

 減圧法では井戸の中の「圧力を下げる」ことにより、メタンハイドレートを含む地層に作用する圧力を減らし、地層中でメタンハイドレートを分解させメタンガスの生産を促します。

図2 減圧法イメージ図

図2 減圧法イメージ図

 図2は海底下に存在するメタンハイドレートの例ですが、メタンハイドレートが含まれる地層(メタンハイドレート層)には、水深+海底面からメタンハイドレート層までの深度分の圧力(水頭圧)が作用することになります。そこで、減圧法では、ポンプ等を用いて井戸の中の水をくみ上げ、水頭を下げる(圧力を下げる)ことで地層に作用する圧力を減少させ、井戸近傍のメタンハイドレートをメタンガスと水に分解します。圧力の変化(減少)は次第に井戸から離れたところまで伝わり、分解の範囲も広がっていくと考えられます。これまでMH21-Sが対象としてきたメタンハイドレート層は砂層と泥層が重なり合う「砂泥互層」内の砂層で、在来型の石油やガスが存在する地層と同様に浸透性(流体の流れやすさ)が高く、水平方向の連続性も比較的良好と考えられています。そのため、圧力の変化も伝わりやすく、また、分解してできた水やメタンガスが流れやすい特徴があると考えられます。

 一方で、砂層の上下にある泥層は浸透性が低いため、圧力変化を砂層にとどめるとともに、海底面などからの海水の流入やメタンガスの漏洩を防ぎます。こうした泥層により挟まれた砂層だからこそ減圧を可能とし、メタンガスと水を生産できるのです。

 また、泥層にはもう一つ重要な役割があります。メタンハイドレートの分解反応は「吸熱反応」、すなわち、反応が進むにつれて分解した領域の温度は低下し、周りの砂層の熱を吸収するのですが、泥層の持つ熱が砂層に供給されることで分解はより促進され、多くのメタンガスが得られると考えられています。

図3 第2回海洋産出試験における減圧法を用いたメタンハイドレート層からのガス生産のイメージ

図3 第2回海洋産出試験における減圧法を用いたメタンハイドレート層からのガス生産のイメージ

 メタンハイドレートの分解は「吸熱反応」で熱を消費するため、減圧すると周辺の地層が冷却され温度が下がり、分解しにくい状態となります。現在検討している減圧法では、坑内の水をくみ上げ減圧するとともに、メタンハイドレートが存在する砂層の周りにある泥層や、運ばれてくる水によって供給される熱を用いることで継続的に分解を続けます。

 どのくらいの生産量(レート)でメタンガスを得られるかは、周囲から十分な熱が供給できるかにかかっています。ただし現時点ではどの程度まで分解するのかわかっていないため、これらの現象の持続性を把握する事が、回収率を検討する上での重要な課題の一つといえます。

減圧法のメリット

 減圧法にはもうひとつ大きなメリットがあります。それは在来型資源開発で培ってきた知見や技術、設備などが応用可能なことです。地層中の流れやすい砂層などから資源を取り出す技術は、これまで石油や天然ガス等の在来型資源開発で発展してきました。在来型油ガス田の対象とする地層の深度はメタンハイドレート層と比べて非常に深いため、初期の地層は圧力が高く井戸を掘ることで自噴しますが、生産を継続すると地下の圧力が下がり生産量も減少します。その際には、「人工採油法」と呼ばれる技術が用いれられ、ポンプ等を井戸の中に設置するなどして、生産量の維持・回復を試みることがよく行われますが、それらの技術を減圧法に適用することが可能となります。深度こそ違いますが、利用できる技術は在来型資源開発の応用といえ、実際、過去の産出試験で使用したポンプや井戸、生産設備等は在来型資源開発で使用されているものをそのまま使用したり、改造・改良して用いています。装置を一から開発する必要がないため、開発コストを大幅に削減できるのも大きなメリットのひとつといえます。

加熱法

 前述の通り、「圧力を下げる」以外のメタンハイドレートを分解する方法として「温度を上げる」方法(「加熱法」)があります。仮に圧力が一定であったとしても、温度が高くなれば「メタンハイドレート安定領域」からは外れ、メタンガスと水に分解できることが図1の安定領域図の圧力と温度の関係からもお分かりになるかと思います。加熱するために真っ先に思いつくのがお湯を井戸の中に入れることです。実際、過去に実施した生産試験では、この方法でメタンハイドレートを分解しました(詳細は陸上産出試験の項目を参照)。しかしながら、この方法ではお湯を沸かすために多くのエネルギーが必要となるためエネルギー効率が低く、そのために要する設備費用や操業のため費用もかさみコスト高と考えられるため、「経済性」の面からすると現時点では「減圧法」よりも不利だと考えられています。

Contents

Copyright © 2002-2020 MH21-S R&D consortium All Rights Reserved.
ページトップへ戻る