MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

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MH21の18年間の成果

各フェーズ概要

「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」のこれまでの成果(2001~2018年度)

2001年7月に経済産業省が「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を策定し、メタンハイドレート研究開発が開始されました。

(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(当時)、(独)産業技術総合研究所(当時)等が「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21)」を組織し、メタンハイドレート研究開発を実施しました。 MH21は以下の3つのフェーズの18年間にわたりメタンハイドレート研究開発を執り進め、その研究事業と成果を2019年度以降のフェーズ4に引き継ぎました。

フェーズ1(2001~2008年度)

東部南海トラフをモデル海域 としてさまざまな調査を進め、砂層型のメタンハイドレート濃集帯を発見し、東部南海トラフのメタンハイドレート原始資源量を算出しました。

2001年度と2007年度にはカナダで2回の陸上産出試験を実施し、1回目の試験では、世界で初めてメタンハイドレート層からメタンガスを5日間連続生産しました(温水循環法)。さらに2回目の試験では、世界で初めて「減圧法」を用いて6日間連続のメタンガスの生産を確認しました。

左:第2回陸上産出試験サイトの遠景 右:第2冬試験で生産されたメタンガスのフレア

左:第2回陸上産出試験サイトの遠景 右:第2冬試験で生産されたメタンガスのフレア


■ 「フェーズ1総括成果報告書」はこちらからご覧いただけます。

フェーズ2(2009~2015年度)

2013年、愛知県~三重県沖合(第二渥美海丘)で減圧法を用いた世界初の海洋産出試験を実施し、6日間のメタンガスの生産を確認しました。しかし、この試験では メタンガスと水の分離が十分に行えず、生産井内の圧力を制御することが難しかったり、6日目に出砂対策が正常に機能しなくなるという課題が残ることとなりました。

左:ドリルフロア作業 右:バーナーからのフレア

左:ドリルフロア作業 右:バーナーからのフレア

フェーズ3(2016~2018年度)

2017年、第1回試験と同海域にて減圧法を用いた第2回海洋産出試験を実施し、2坑井で合計36日間のガス生産を実現しました。第1回海洋産出試験で生じた出砂対策等の技術課題への対応策はおおむね検証できましたが、想定どおりに生産量が安定して増加しないなど、新たな課題が生じました。また、開発計画の最終年度として、技術課題や経済性評価、我が国周辺の資源量評価、周辺環境への影響等を含めた総合的な検証を実施しました。

2018年12月には、日米共同で米国アラスカ州の長期陸上産出試験のための試験候補地点の試掘調査を実施し、試験の実施に向けた準備を行いました。

図1「我が国におけるメタンハイドレート開発計画(2001~2018年度)」の実施内容と成果(経済産業省「第34回メタンハイドレート開発実施検討会」資料4より一部改変)

図1「我が国におけるメタンハイドレート開発計画(2001~2018年度)」の実施内容と成果
(経済産業省「第34回メタンハイドレート開発実施検討会」資料4より一部改変)


■ 「フェーズ2及びフェーズ3総括成果報告書」はこちらからご覧いただけます。

メタンハイドレート産出試験

第1回メタンハイドレート陸上産出試験(2001年12月~2002年3月)

第1回メタンハイドレート陸上産出試験は、2002年にカナダ北西準州のマッケンジーデルタ地域マリックサイトで、5カ国(日本・カナダ・米国・インド・ドイツ)、7機関(JOGMECの前身である石油公団、カナダ地質調査所(GSC)、米国エネルギー省、米国地質調査所、ドイツGFZ、インド石油天然ガス省インドガス公社、BP-シェブロンテキサコ・マッケンジーデルタ共同企業体)の共同研究として行われました。

陸上のマリックサイトは、夏は湿地ですが、冬は地面が凍結します。この地域周辺は永久凍土層が地下600m付近まで続いていて、圧力が高くなる地下が低温になっていて、低温高圧で安定なメタンハイドレートが存在できる環境になっています。 1998年に旧石油公団とカナダ地質調査所が実施した調査で深度650mまで広がる永久凍土層の下の、深度890m~1,100mの区間に、4ないし5層に分かれて、砂層の孔隙充填型メタンハイドレートが見出されていました。 夏場は湿地で試験施設の設置や機材の輸送が困難なため、試験は地面が凍結する冬場に行われました。

2002年の試験では、メタンハイドレートからメタンガスを生産する手法として、加熱法の一種である温水循環法が選択されました。試験用の井戸に80℃の温水を送り込み、地下1,100m付近に存在するメタンハイドレート層を加熱し、メタンハイドレートを分解させようというものです。この温水循環方によって、Mallik 5L-38坑井で5日間の生産期間中に約470m3のガスを生産しました。これは、世界で初めてメタンハイドレートから分解させたメタンガスの生産に成功となりました。

しかし、メタンハイドレートというエネルギー資源を生産するために別のエネルギーを使って温水を作らなければならないのが加熱法です。エネルギー効率の面から加熱法に代わる効率の良い生産手法を考えるため、減圧法の研究も進めていました。

陸上産出試験が実施されたマリックサイト

陸上産出試験が実施されたマリックサイト

第2回メタンハイドレート陸上産出試験 第一冬(2007年4月)

日本とカナダの共同で、カナダのマッケンジーデルタにおいて、第2回メタンハイドレート陸上産出試験(第一冬)を実施しました (減圧法)。

既存坑井である Aurora/JOGMEC/NRCan Mallik 2L-38(1998年に石油資源開発・旧石油公団・カナダ地質調査所が研究用に掘削した坑井)を再利用して生産井とし、坑井の改修を行うとともに、最新の技術を使った地質・地球物理学的データの取得と生産モニタリング用装置の設置を行いました。

悪天候により作業が遅れましたが、深度約 1,100mのハイドレート層の12m区間にパーフォレーション(火薬による鋼管ケーシングの穿孔)を行い、地層を減圧するためのポンプを設置して、2007年4月2日(現地時間)から坑内の水を排出して減圧を開始。しかし、減圧によって坑井内に入り込んだ砂(出砂)の影響により短期間(約60時間)で試験を断念せざるをえませんでした。この時の生産継続時間は 12.5時間、生産したガスの量は 830m3と見積もられました。この数字は2002年の5日間の生産量(約 470m3)を上回っており、減圧法が有望な手法であることがフィールドスケールで検証されました。

減圧法によりメタンハイドレートを含む地層からメタンガスを生産したのは、本試験が世界で初めてでした。

第2回メタンハイドレート陸上産出試験 第二冬(2008年3月)

2007年の結果を踏まえ、2008 年の第二冬には出砂対策を施すなどの改良を行い、より長期の試験を試みました。アイスロードの建設、敷地造成などの準備作業の後、再び坑内にポンプを設置して、前年と同じ12m区間において3月10日の午後から減圧を開始し、3月16日正午に、予定された試験終了期日に達してポンプを停止しました。

12m区間からのガス生産量は2,000-4,000m3/日で、継続的でほぼ安定した生産が達成でき、5.5日間で累計生産量は約13,000m3に達し、第1回陸上産出試験の約470m3を大きく上回り、減圧法がメタンハイドレート生産に対して有効な生産手法であることが示されました。


ガス生産期間:約5.5日間

累計ガス生産量:約13,000立方メートル

平均ガス生産量:約2,400立方メートル/日(一日あたりの生産量の変動幅は2,000~4,000立方メートル程度)

オペレータ:カナダ北西準州のオーロラ・カレッジ

メタンハイドレート第二回陸上産出試験とその意義について(PDFファイル 150KB)

左:第2回陸上産出試験サイトの遠景 右:第2冬試験で生産されたメタンガスのフレア

左:第2回陸上産出試験サイトの遠景 右:第2冬試験で生産されたメタンガスのフレア

第1回メタンハイドレート海洋産出試験(2012年2月~2013年4月)

世界初となる第1回メタンハイドレート海洋産出試験が東部南海トラフの第二渥美海丘にて実施され、減圧法により6日間連続でのガス生産を確認しました。

第1回メタンハイドレート海洋産出試験は、2012年2月から3月にかけて、事前掘削作業として生産井やモニタリング井の坑井掘削を行い、6月から7月には、メタンハイドレート層から、圧力を保持したコアサンプル(地質試料)を含むコアの採取作業を行いました。掘削、実験機器設置等の準備作業を経て、2013年3月12日にメタンハイドレート分解によるガス生産実験を行っていたところ、減圧のために水をくみあげるポンプが一時的に不調となり、同時に出砂が増加するなどの坑内状況の変化等がみられたこと、また、天候の悪化が見込まれることから、機器やデータ類の安全確保のため、3月18日にガス生産実験を終了しました。

減圧法による海洋のメタンハイドレ-ト層からガスを生産し、連続ガス生産をおこなったこと、生産井から約20メートル離れたモニタリング井までメタンハイドレ-トの分解が及んでいる徴候を確認できたことなど、今後の研究開発を推進していくうえで必要なデータを得ることができましたが、天候悪化と出砂により試験が中断されたため、長期的な挙動を知るのに十分なデータを取得できたとはいえませんでした。


現場作業期間:2013年1月~3月

ガス生産期間:6日間

累計ガス生産量:累計119,000立方メートル

平均ガス生産量:約20,000立方メートル/日

<オペレータ>JAPEX

<使用船舶> 地球深部探査船「ちきゅう」

左:ドリルフロア作業 右:バーナーからのフレア

左:ドリルフロア作業 右:バーナーからのフレア

第2回メタンハイドレート海洋産出試験(2016年5月~2018年6月)

第2回メタンハイドレート海洋産出試験は、第1回試験と同海域にて第1回試験で課題となった「出砂対策」「メタンガスと水の分離」「荒天への対応」に対する対策を施し、2017年4月7日より準備作業を始め、2017年5月4日にメタンガスの生産産出を確認しました。その後ガスの生産を継続していましたが、生産坑井内へ大量の砂が流入し、船上での対応作業が困難となったため、5月15日早朝にガスの生産を一時中断、その後、出砂対策を施した2本目の生産坑井でガス生産に向けて準備作業を行い、5月31日に減圧を開始し、6月5日に、減圧によってメタンハイドレート層から分解したとみられるメタンガスの生産を確認しました。

2坑井で合計36日間のガス生産を実現し、この結果により、海洋において数週間程度の連続的な減圧とガス生産を実現できることが実証されました。また、長期生産挙動の予測に資する多くのデータも取得できましたが、観測された生産挙動は事前予測と異なるなど、新たな課題も見いだされ、さらなる研究が必要となりました。


現場作業期間:2017年4月~7月

ガス生産期間:36日間 1坑目:12日間 40,849 立方メートル
            2坑目:24日間 222,587 立方メートル

<関係者> JOGMEC(実施主体)、JMH(オペレータ)

<使用船舶> 地球深部探査船「ちきゅう」


左:出砂対策装置の関連機器降下 右:フレア

左:出砂対策装置の関連機器降下 右:フレア

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