MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

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各チームの取組

各チームの課題や今後の実施内容等を紹介します。


(注)第38回 メタンハイドレート開発実施検討会(2021年11月17日開催)にて研究開発期間を1年間延長し、2023年度までとすることが示されています。
また、第42回 メタンハイドレート開発実施検討会(2023年11月6日開催)にて研究開発期間を2年間延長し、2025年度までとすることが示されています。

貯留層評価チーム

 これまでの海洋産出試験においては、数値シミュレーションによる生産量の予測と計測されたガスや水の生産挙動などの間に依然としてかい離が認められることから、生産挙動予測の信頼性を向上させることが求められています。予測と実際の挙動のかい離は、安定的な生産を阻害している何らかの要因にも起因すると考えられますので、その安定生産を阻害する要因の究明も重要な課題となっています。それらを克服するためには、メタンハイドレートが胚胎する地層(貯留層)の特徴や生産に伴って貯留層内で起こる現象をより深く理解することが鍵となります。

 当チームでは、コア分析、地質/貯留層モデリング・シミュレーション、ジオメカニクス(地層の力学的)検討、シミュレータ機能強化・増進回収法検討、物理探査モニタリング検討、機械学習等適用検討を行う6つのサブチームを設置し、これまでに得られている知見を用いて様々な角度から課題解決に向けた検討を実施することで生産挙動予測、技術的可採量(注1)評価の信頼性向上を図ります。

<実施内容>

 過去に実施した海洋産出試験のデータ解析等から、貯留層内のメタンハイドレートの分布は一様ではなくバラつきがある(「不均質」である)ことが示唆されていますが、これまでの生産挙動予測では、そのような特徴はあまり考慮されていませんでした。

 当チームでは、コア分析データ、検層解析等に基づく地質的な不均質性等の特徴を盛り込んだ地質・貯留層モデル(注2)の構築手法の検討、生産に伴う地層変形や細かい砂粒子の移動等に関するジオメカニクス的な検討、機械学習やAI等最新技術の貯留層評価への適用性検討などを反映した、信頼性の高い(予測と実際の生産データのかい離が小さい)生産挙動予測手法、技術的可採量評価手法の開発を進めます。

(1) 第2回海洋産出試験を中心とした試験結果の再検証を進め、貯留層評価の観点から安定的な生産を阻害している可能性のある要因を抽出する。

(2) 2018年度に米国アラスカ州の陸上で掘削された層序試錐井(Stratigraphic Test Well:STW)(注3)にて得られたデータを踏まえ、長期陸上産出試験の試験候補地を対象とした地質・貯留層モデルを構築し、それに基づく数値シミュレーションによりガス・水の生産量予測を実施する。

(3) これまでの検討結果に加えて、陸上産出試験で得られるデータを用いた評価・解析作業を実施する。

(4) 長期生産挙動に関する知見を整理するとともに、生産挙動予測や技術的可採量評価手法の信頼性を高め(予測と実際の生産データのかい離を許容できるレベルとし)、次フェーズ海洋産出試験への移行の可否の判断に資する情報を提供する。

注1 技術的可採量…「可採埋蔵量」は、技術的・経済的に採取可能な量を示し、その値は評価時点で適用可能な技術、及びガス価格を含む経済的な条件によって変動する。メタンハイドレートの場合、現時点では経済性を評価するのが難しいため、現実的な技術で採取可能と見込まれる量を便宜的に「技術的可採量」と表現している。

注2 地質・貯留層モデル…地質情報、地震探査データ、坑井データ等に基づき、対象エリアの地層の特徴及び各種性状(パラメータ)の分布を表現したモデルを「地質モデル」と呼び、それを数値シミュレーションにおいて実用的な時間で計算結果を得るべく計算単位となる各格子(セル)のサイズを大きくしたり(アップスケーリング)、流体の移動等貯留層内の物理的な変化を計算できるよう物理モデル(物理現象を表現するための数式)等を組み込んだものを「貯留層モデル」という。

地質モデルの一例

地質モデルの一例

注3 層序試錐井(Stratigraphic Test Well:STW)…メタンハイドレート層の存在を確認すると同時に各種物性データを取得することを目的とした坑井(試掘井とほぼ同義)。本坑井は長期産出試験においてはモニタリング井として用いる計画であり、各種センサーも設置済み。

生産挙動予測と技術的可採量評価の信頼性向上に係る計画

生産挙動予測と技術的可採量評価の信頼性向上に係る計画

生産システム改良チーム

これまでに実施された海洋産出試験は最長でも数週間であり、長期安定生産等に関する十分なデータが得られておらず、長期安定生産等に関する技術も実証されていないことから、今後数か月程度の産出試験が必要となっています。また、これまでの産出試験から、出砂・出水等の生産阻害要因も解決すべき課題となっています。更にこれら課題解決可能な技術が将来商業化を意図した大規模な生産システムに拡張出来る必要があります。

 当チームでは、次フェーズ海洋産出試験において長期安定生産のための生産システム(注4)構築と出砂・出水等の生産阻害要因に対する要素技術検討を実施します。

<実施内容>

 次フェーズ海洋産出試験は、これまでの海洋産出試験よりも長期的にガスを生産し、またより複雑なシステムを運用することで商業化に向けたシステム検討に資する情報を取得することが目的となります。そのため、次フェーズ海洋産出試験のFEED(注5)(基本設計)作業に速やかに移行することを目指し、一連の準備作業として基本仕様設定や機器等に関する基礎技術検討を実施し、FEED準備作業等を完了することを目標とします。要約するとフェーズ4での当チームの具体的な目標は以下2つとなります。

(1) 基礎的技術検討、安定生産阻害条件の抽出と解決策の検討、複数坑井からの同時生産・モニタリング井を含む一連の坑井計画および坑井内機器から生産処理設備、フローラインに至るメタンハイドレート開発生産に関わる一連の設備・施設群を検討する。

(2) FEED…実施体制の整備に向けた検討により次フェーズに向けた FEED 準備が整うことを目指す。

注4 生産システム・・・メタンハイドレートからのガス生産に関わる一連の設備・施設群。

注5 FEED・・・Front End Engineering Design の略。概念設計・フィージビリティースタディの後に行われる基本設計。EPC(設計・調達・工事)の前段階で、設計を通して技術的課題や概略費用などを検討する。

生産システムのイメージ図

生産システムのイメージ図

生産システムのイメージ図で、減圧法にて生成されるメタンガスと生産水の一連の処理を示すと概ね以下のようになる。

・メタンハイドレート層から減圧にて生成したメタンガスと生産水をポンプにて坑井からセパレーターに移送。

・そして、セパレーターにてメタンガスと生産水を分離しそれぞれライザーを通して母船まで移送。

・母船にてガス、水生産量等必要なデータを計測すると共に必要なガス処理、水処理を行う。


海洋における長期生産技術の開発・改良

海洋における長期生産技術の開発・改良

長期陸上産出試験チーム

 2014年11月にJOGMECと米国エネルギー省国立エネルギー技術研究所(US Department of Energy, National Energy Technology Laboratory: NETL)間で締結したアラスカでの長期陸上産出試験の研究協力に関する覚書(Memorandum of understanding: MOU)に基づき、国際研究協力体制にて実施しているプロジェクトです。

 2017年に実施した第2回海洋産出試験において2坑井にて合計36日間の産出試験を実施しましたが、数値シミュレーションによる生産挙動予測結果と生産試験によるかい離が見られ、その理由を明らかにし生産予測手法の信頼性向上を図るためには数ヶ月あるいは年単位の生産挙動並びに長期生産に伴うデータ取得が必要です。

 長期陸上産出試験では、1年程度の産出試験を実施し、貯留層評価チームが実施する生産挙動予測手法の信頼性向上に資するデータの取得を行うとともに、生産阻害要因などの技術課題の解決策の検証や長期生産に伴う課題の抽出を行うことを目的としています。そのため、長期陸上産出試験の計画策定、準備作業、実施体制の構築、長期産出試験の実施及びデータ取得等を行います。

<実施内容>

 海洋に比べて比較的単純な条件であり、かつ相対的には作業の柔軟性が高い陸上において長期産出試験を行うことで、メタンハイドレート分解挙動の把握や生産挙動予測精度の向上に必要な長期生産挙動のデータを取得します。

(1) 2020 年度以降に予定されているデータ取得井(Geo Data Well(GDW))及び生産井(Production Test Well(PTW))の掘削、それに続く産出試験実施を可能とするため、オペレータの選定作業を行う。また、モニタリング、坑井仕上げ、出砂対策などの技術検討を実施し、産出試験計画並びに機器仕様などの計画を策定する。

(2) データ取得井(GDW)及び生産井(PTW)2本を掘削する。また、試験設備の調達・据え付けを行う。更に、取得された検層データや圧力コアサンプル等を、貯留層評価チームと共有し、解析を行う。

(3) 産出試験で用いる全坑井の廃坑作業を完了し原状復帰する。また、産出試験で得られる生産データを整理し、長期産出挙動の検討等に資するデータを各チームと共有し解析作業を行う。

掘削リグ

掘削リグ
2018年12月に、メタンハイドレート賦存を確認するために
層序試錐井(Stratigraphic Test Well – STW)をNETLと合同で掘削した。

長期陸上産出試験での長期生産挙動データの取得と生産技術の実証に係る計画

長期陸上産出試験での長期生産挙動データの取得と生産技術の実証に係る計画

三次元地震探査チーム

 (2021年3月より、「三次元地震探査チーム」と「日本周辺海域の資源量評価チーム」を統合して、「探査チーム」としています)

 これまで、第二渥美海丘近傍海域における海洋産出試験を2回実施し、有益なデータの取得を実施してきましたが、次フェーズ海洋産出試験やその後の商業化を見据えた場合、より有望な海域を抽出することが必要となります。

 当チームでは、より有望な海域の選定を進めるため、調査海域の選定、調査データ取得仕様や計画の策定、調査実施のための調整等を行います。

<実施内容>

 次フェーズ海洋産出試験海域の選定のための試掘対象となる有望濃集帯候補を抽出するために、最適な抽出条件を追求するとともに、既存の探査データの解析や新たに取得された三次元地震探査データの解析等を実施します。

(1) 調査実施のための関係各所との調整を行い、三次元地震探査が実施される。

(2) 既存の探査データの解析や三次元地震探査による探査データの解析等を実施し、次フェーズ海洋産出試験海域の選定のための試掘対象となる有望濃集帯候補を抽出する。

(3) 資源量・有望濃集帯に関する知見のとりまとめを行う。

三次元地震探査の準備・実施・解析に係る計画

三次元地震探査の準備・実施・解析に係る計画

日本周辺海域の資源量評価チーム

 (2021年3月より、「三次元地震探査チーム」と「日本周辺海域の資源量評価チーム」を統合して、「探査チーム」としています)

1.日本周辺海域におけるメタンハイドレート資源量評価
 今まで、二次元・三次元地震探査データを用いてメタンハイドレート存在を示すひとつの指標であるBSR(注6)分布の詳細評価を実施した結果、日本周辺海域で複数のメタンハイドレート濃集帯候補の存在が示され、各濃集帯の特徴を整理しました。
 今後も基礎物理探査データの取得が見込まれることから、新たなデータを用いて継続的に資源量評価を実施しています。

2.メタンハイドレートシステムの検討
 メタンハイドレートシステムとは、微生物起源と熱分解起源のメタンの生成・移動・集積・メタンハイドレートの形成までの一連の過程をシステムとしてとらえたものです。
 今までも長期にわたり、取得されたコア試料を用いた分析・実験等を行い、メタン生成菌によるメタンガスの生成が活発に行われている可能性が高い温度条件を確認したり、濃集帯形成の条件を検討するために、二次元・三次元堆積盆シミュレーションを実施し、濃集帯の形成過程を再現しうることを確認したりしています。今後も実験データの拡充や実データを用いた評価を進めることにより、メタンハイドレートシステムの信頼性をより高め、資源量評価の手段として用いることにしています。

メタンハイドレートシステムのシミュレーション

微生物によるメタンガスの生成から、ガスの移動と集積、ハイドレートの生成の仮定を
コンピュータでシミュレートし、濃集帯の規模や特徴を予測する。

<実施内容>

日本周辺海域の資源量評価として、将来的に資源となる可能性のあるメタンハイドレートの賦存状況について地震探査データ等を用いて、継続的に評価します。

(1) 新規の知見・データの収集を試みつつ、民間企業が本格的にメタンハイドレート開発に着手するためのエリア選定に資するような基礎資料を充実させることを目標として、メタンハイドレート濃集帯の評価エリアの拡充を図る。(継続的実施)

(2) メタンハイドレートシステムの検討により鉱床成因論的な資源量評価を実施し、メタンハイドレート探査の評価の信頼性を高める。(継続的実施)

(注6) BSR…(Bottom Simulating Reflector:海底擬似反射面)
地震探査で海底に平行して現れる特殊な反射記録。メタンハイドレートの存在を示し、メタンハイドレート濃集帯抽出のためのひとつの指標となる。

試掘作業チーム

 三次元探査等のデータをもとに抽出した有望海域では、次フェーズ海洋産出試験に先立ち、地層状況を把握することを目的とした試掘作業を計画しています。本フェーズで実施する試掘作業では、掘削同時検層(LWD:Log While Drilling)や圧力コアリングの実施による地層状況の把握とともに、生産挙動予測手法の信頼性向上に向けた簡易的な生産実験を計画しています。

 当チームでは試掘作業等の実施に向けた坑井仕様、データ取得手法等の検討のほか、試掘作業の準備等を行います。

<実施内容>

 将来の資源フィールドの検討及び次フェーズ海洋産出試験の適地検討の観点から、2022年度までに簡易生産実験を含む試掘を実施し、地質・メタンハイドレート賦存状況及び貯留層特性に関するデータを取得することを目的とします。

(1) 試験機器等の検討を行い、より簡易で確実にデータ取得可能なシステムの抽出を行う。また、将来に向けた掘削作業効率化への検討等を行う。

(2) 2019 年度に抽出された最適な試験機器の詳細設計を進め、より現実的なシステム計画を構築する。また、試験地点抽出のための試掘作業の準備等を開始する。

(3) 定められた試掘地点での作業計画の立案や関係機関との調整、事前調査の準備作業等を経て、試掘作業と簡易生産実験を実施して必要なデータを取得し、地質状況の把握や解析に資する。

簡易生産実験装置概念図

簡易生産実験装置概念図

メタンハイドレート層部分には出砂対策用スクリーンがセットしてあり、ハイドレートが溶け生じたガスと水は、そのスクリーンを通して坑内に入る。スクリーン周辺には温度・圧力センサーがセットしてあり、生産中のデータを音波にて船上に送る。

坑口装置にはバルブが2つ付いていて、悪天候等の緊急時には両方のバルブを閉じ、
真ん中から切り離して船が退避できるようになっている。

生産流体(メタンハイドレートが溶けたガスと水=黄色部分)は、坑口装置直上にある水中ポンプで吸われて、
坑内からライザー区間を通って船上に汲み上げられる。船上にてガスと水に分離して計量、処理される。


試掘(簡易生産試験を含む)実施・準備に係る計画

試掘(簡易生産実験を含む)実施・準備に係る計画

環境影響評価チーム

 海洋の中でも特に大水深海域における石油・天然ガス開発の経験に乏しい日本において、大水深海域でのメタンハイドレート開発に伴い生じうる環境影響を把握することは重要なタスクのひとつです。

 これまでに実施してきた2回の海洋産出試験を通じて、試験地点の近傍で生じる環境影響の程度の確認を行い、取得したデータを用いて環境影響の予測手法や評価手法の検討を進めてきました。

 環境影響評価チームでは、「次フェーズ海洋産出試験の候補海域の環境ベースラインデータを取得することにより、次フェーズ海洋産出試験の候補地点で想定される環境影響の程度を推定すること」を目標に、海域環境調査を行うとともに、これまでの課題の整理を踏まえて影響予測や影響評価の手法等の信頼性を向上するための研究を行います。

<実施内容>

 これまでに海洋産出試験を実施した海域において、環境調査を継続して行い、環境影響を評価するために必要となる大水深海域の自然環境の特性把握に努めるとともに、次フェーズ海洋産出試験の候補海域において海域環境の調査を行い、取得した環境データを環境影響の予測や評価に活用するためのベースラインデータとして整理します。また、環境影響の予測手法や評価手法の信頼性を向上するための適正化を図り、これらの成果を通じて次フェーズ海洋産出試験の環境影響の程度を推定します。

(1) 海洋産出試験を実施した海域を日本南岸のモデル海域のひとつと位置付け、継続して環境影響に係るデータを取得し、次フェーズ海洋産出試験の環境影響評価のための知見として整理する。

(2) 次フェーズ海洋産出試験の環境影響評価のために必要となる候補海域の環境データを取得し、シミュレーション予測や定性的な影響評価に活用するためのベースラインデータとして整理する。

(3) フェーズ3までの旧開発計画で検討を進めた影響予測や影響評価の手法について、抽出された課題や新たに取得するデータ等を踏まえて、信頼性向上のための適正化を進める。

(4) これらの適正化を進めた影響予測手法や影響評価手法を用いて、次フェーズ海洋産出試験の候補海域のベースラインデータ等をもとに、予察的に環境影響の程度を推定する。

第二渥美海丘周辺の海底で、多く出現した深海性のアナゴの仲間(ホラアナゴ科)

第二渥美海丘周辺の海底で、多く出現した深海性のアナゴの仲間(ホラアナゴ科)

写真は、水中ロボット(ROV)での海底の泥の採取中に出現した深海性のアナゴの仲間。
手前に映っているのは、水中ロボットの腕と、海底の泥を採取するための小さいコア。

ガス生産試験の前後や環境調査の作業時にも、様々な深海の魚が周囲を悠々と泳いでいる姿が
観察されている。フェーズ4でも、海底での生物観察や泥の採取を継続して行っていく。


第二渥美海丘周辺で採集されたハリナガオオベニアミ

第二渥美海丘周辺で採集されたハリナガオオベニアミ

大きさが10cm前後のマイクロネクトン(泳ぐ力のある小型の生物の総称)は、海に広く分布し、
昼と夜で生息する水深を変えて生活している。写真のハリナガオオベニアミのようなマイクロネクトンは、
より大きな魚などのエサになり、自然環境のなかでも重要な役割を担う生き物。フェーズ4でも、
このような生物がどの様に分布しているか、また、このような生物にどの様な影響が及びうるかを調査する。


環境影響評価に係る計画

環境影響評価に係る計画

商業化に向けた検討チーム

 メタンハイドレートの商業開発のためには、個別技術の課題とともに、それらを組み合わせて大規模な海洋開発システムを構築できるのか、その海洋開発システムで経済性を確保できるのかが重要な課題となります。

 なお、海洋開発システムとは、メタンハイドレート資源開発の目的で、海底面下、海底、洋上に設置される、掘削、生産、ガス輸送、及び作業のサポートのための一連の施設・設備・機器・装置(ハードウエア)、及びそれらの運用のための仕組み(ソフトウエア)の全体を指します。

 フェーズ1から3では、海洋開発システムの技術的実現性と経済性に関する評価を適宜実施し、商業化が期待できる濃集帯の規模、生産量、開発システムに関する条件を抽出して、それらの条件が非現実的でないことを確認しました。

 しかしながら、技術課題が克服され、経済性が保てると評価されても、直ちに商業化へと至ることができるでしょうか?商業化、すなわちメタンハイドレートから生産されたガスを販売するということは、売り手側だけで成り立つものではなく、買い手がいなければ成り立ちません。そこで、買い手を考慮した生産計画や販売方法が重要となりますので、これらに関する諸条件についても、事前に把握しておかなければなりません。

 これまで日本で大水深開発が行われたことはありませんが、はたして現行法規制の下でメタンハイドレート開発は可能なのでしょうか?もしかすると、法規制を改定したり追加したりしなければならなくなるかもしれません。そこで、現行の法規制について詳細に把握するとともに、もし何か課題があるならば、それを解決する方法を考えておく必要があります。

 また、現在のところ、開発の初期投資額は1,000億円を超えると予想されており、資金の調達方法も課題となります。国・株主などからの出資や金融機関からの融資が必要となりますが、その出融資条件をクリアーしなければなりません。そこで、様々な出融資条件を把握し、もし課題があるならば、それを解決する方法を考えておく必要があります。

 このように、技術的、経済的な課題の他に、様々なステークホルダーとの関係の中で生じる課題が存在します。技術的な課題が解決され、経済性が確保できるようになったら、民間企業がすぐに開発へと移れるよう、外部環境について要件を抽出し、課題を見極め、解決するための事業化シナリオ(道筋)を準備しておくことが必要です。事業化シナリオ案を提示することがフェーズ4における当チームの目的です。

<実施内容>

旧開発計画で示された課題を基に商業化に必要な要件を抽出します。また、旧開発計画で整理した事業化シナリオ案を改定するための情報を収集し、開発システムを再検討し、経済性評価を実施します。

開発システムの一例

開発システムの一例

事業推進チーム

JOGMEC、AIST及びJMHの三法人で組成するコンソーシアムを円滑かつ効率的に運営するための企画調整とともに、メタンハイドレート研究開発活動を国民等にわかりやすく伝える成果普及活動等に努めます。

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