MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

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メタンハイドレートの基礎情報

メタンハイドレートとは

天然ガスの一種としてのメタンハイドレート

キーポイント
  • 都市ガスの原料は天然ガス、天然ガスの主成分はメタン(CH4
  • 天然ガスは、石油と同じように地下深くの地層(岩石)のすき間に存在し、井戸を掘って生産する。日本の自給率は2.5%(2018年)
  • 地下で自由に動けない状態の天然ガス資源を「非在来型天然ガス資源」という。
  • 固体であるメタンハイドレートは「非在来型天然ガス資源」の一種。ただし、まだ商業的には生産されていないので、本当に「資源」といえるかわからない。

現在、日本の家庭に供給されている都市ガスの大部分は、地下から取り出された天然ガスを主原料としています。その天然ガスの主成分は、メタンという物質で、メタンは化学式で書くとCH4(C:炭素原子がひとつとH:水素原子が4つ)となります。メタン自体は無色無臭のガスです。ガスに匂いがあるのは、ガス漏れに気づくように臭う物質を添加しているからです。

さて、そのメタンの元である天然ガスですが、日本ではその需要の97.5%を、液化天然ガス(LNG)として輸入することでまかなっています。その天然ガスの約1/3が都市ガスとして供給され、残りの大部分は天然ガス火力発電所で燃やされ電力としてみなさんが利用しています。

天然ガスは、石油と同じように生物の死骸を元に地下で長い年月かけて生まれ、集積された「化石燃料」の一種で、通常は陸上の地下あるいは海底面下の深い(数百~数千メートル)場所に存在しています。それを生産するのは、やはり石油と同様に、その深さまで井戸を掘る必要があります。

現在生産されている天然ガスの大部分は、砂粒子からなる地層(砂層、砂岩層)の粒子間のすき間に圧力のかかった状態で貯留されているもので、井戸を掘ることで自然に井戸に集まってきて生産できます。そのような天然ガスは「在来型の天然ガス資源」と呼ばれています。それに対して、地下で簡単には動かない状態の天然ガスは、まとめて「非在来型の天然ガス資源」と呼ばれています。最近、商業的に生産されるようになった「シェールガス」も非在来型の天然ガスの一種です。

地下・海底面下で固体の状態で存在するメタンハイドレートも、シェールガスと同様の「非在来型の天然ガス資源」の一部と考えられています。しかし、生産コストは高いけれども商業化されているシェールガスと違って、メタンハイドレートはまだ、本当に資源になるかどうか確認されたわけではありません。

メタンハイドレートとは何か?

キーポイント
  • 水分子が作るカゴの中にメタンの分子が閉じ込められた構造の結晶がメタンハイドレート
  • メタンハイドレートは高圧・低温で安定。安定な圧力温度領域からはずれると水とメタンに戻る。
  • 1m3のメタンハイドレートには、160-170m3(地表条件)のメタンガスが閉じ込められている。このメタンの量は、一般家庭の都市ガス使用量の半年分くらいだが、取り出せるエネルギーはドラム缶一本の原油より少ない。

下の写真のように、白い氷のようなメタンハイドレートの塊が燃えている写真をご覧になったことがある方も多いと思います。メタンハイドレートは、純粋なメタンではなくて、メタンと水の組み合わさった物質です。しかし、地上でメタンと水を混ぜても、メタンハイドレートにはなりません。高い圧力と低い温度という条件が揃うと、メタンと水は結びついて写真にあるような白い結晶を作ります。 このメタンハイドレートの結晶は、地表の環境では分解してメタンと水にわかれ、そこで放出されたメタンガスが燃えているのがこの写真です。メタンが燃えた後には、水だけが残されます。

図1 下の白い塊が人工のメタンハイドレート結晶。地表の温度・圧力では、この物質は水とメタンに分解し、そのメタンに火がついて燃えている。

図1 下の白い塊が人工のメタンハイドレート結晶。
地表の温度・圧力では、この物質は水とメタンに分解し、そのメタンに火がついて燃えている。

なぜこのような物質ができるかですが、水の分子は、磁石にN極とS極があってくっ付き合うように、+(プラス)の電気の極とー(マイナス)の電気の極がありお互いを引っ張り合う性質があるので、高い圧力の下で支えになるような分子(ゲスト分子といいます)があれば、その周りにカゴのような構造を作り、真ん中にゲスト分子を取り込んで固体の結晶を作るからです。このような、水分子がカゴ状の構造を作る物質をクラスレート・ハイドレートと呼び、ゲスト分子がメタンの場合はメタン・クラスレート・ハイドレート、あるいは単にメタンハイドレートと呼びます。

図2 メタンハイドレートの結晶構造(正十二面体の小さいカゴ) 緑三角はメタン分子、赤球は水分子 水分子がカゴ構造を作り、その中にメタン分子が含まれる。

図2 メタンハイドレートの結晶構造(正十二面体の小さいカゴ) 緑三角はメタン分子、赤球は水分子
水分子がカゴ構造を作り、その中にメタン分子が含まれる。

ゲスト分子はメタンでなくても、たとえば二酸化炭素(CO2)や水素(H2)でもクラスレート・ハイドレートは作られます。ただ、必要な温度圧力条件は異なります。0℃の温度条件では、メタンハイドレートは圧力が2.6MPa(ほぼ水深260mの海底の圧力に相当)まで上がれば生成されますが、二酸化炭素ハイドレートであれば1MPa程度で生成され、一方水素ハイドレートを作るには2300MPaという非常に高い圧力が必要です。

このような、気体の分子を取り込んだクラスレート・ハイドレートを総称してガス・ハイドレートともいいます。

ガス・ハイドレートの結晶には、カゴの形に応じてI型、II型、H型といったタイプがありますが、メタンハイドレートはI型の結晶で、水分子が作る正五角形12個からなる小さいカゴと、正五角形12個と正6角形2個からなる大きいカゴの組み合わせからできていて、それぞれのカゴに1個ずつメタン分子が入っています。メタンハイドレートは化学式ではαCH4・5.75H2Oとかけます。αはケージ占有率といって、水分子のカゴのうちメタン分子が入っている割合で、1より小さい数(0.9くらい)になります。つまり、分子一個あたりの質量は水の方が少しメタンより重いので、メタンハイドレートの質量の6/7は水ということになります。

さて、そのメタンハイドレート1m3を分解させると、0.8m3の水と、160-170m3(通常の温度・圧力の下での値)のメタンガスが発生します。160m3というと、ちょうど学校の教室の容積と同じくらいです。また、日本の家庭では、毎日平均1m3くらいのガスを使っているので、5−6ヶ月分ということになります。大変な量に思えますが、その量のガスを燃焼させて得られるエネルギーは、原油にするとちょうど1バレル(159リットル)、ドラム缶一本に足りないくらいの量に相当します。

実際、メタンハイドレートから得られるエネルギーは、同じ重さのジャガイモよりは多いですが、サツマイモよりは少ないくらいです。ジャガイモもメタンハイドレートも、みかけはだいぶ違いますが、ともに、炭素(C)・酸素(O)・水素(H)の組み合わせでできた物質です。ジャガイモは人間の身体の中でエネルギーを産むのに適していて、メタンハイドレートは燃料として使うのに適している、という使い勝手の違いです。

メタンハイドレートを含んだ堆積物

キーポイント
  • 地球上でメタンハイドレートが安定に存在できるのは、深い(水深400m以上)海の底と海底面下の地層、および極地の永久凍土層の中やそれより深い地層。
  • 地下のメタンハイドレートは、砂粒の間や、泥の割れ目の間に存在している。
  • 砂層型のメタンハイドレートは、石油開発の技術の応用でエネルギー源として利用できる可能性があると考えられる。

そのメタンハイドレートですが、どこにどんな形で存在しているのでしょうか。

メタンハイドレートが安定して存在できる温度・圧力の領域と、分解してメタンガスと水に分れてしまう温度・圧力の領域の境界を、「相平衡曲線」と呼んでいます。

下の図1で、何本かある線の左上(高圧・低温側)はメタンハイドレートが安定に存在できる領域、右下(低圧・高温側)ではハイドレートはガスと水に分解します。なぜ線が何本もあるかというと、この相平衡曲線は、塩分など、水に溶け混んでいる成分があると少し変化するからです。ここでは、異なる濃度の塩(NaCl: 塩化ナトリウム)によって相平衡曲線がどうかわるか示しています。海水は、概ね3.5%の濃度のNaClを含んでいます。

図1「メタンハイドレート」と「メタンガス+水」の相平衡曲線

図1「メタンハイドレート」と「メタンガス+水」の相平衡曲線

図1を見ると、深海底の温度は3−4℃のことが多いですが、その温度では圧力が4MPa以上でなければメタンハイドレートができないということがわかります。4 MPaという圧力は、水深にすると400mくらいに相当します。これが、メタンハイドレートが深い海、あるいは湖の底でなければ見つからない理由です。このような、メタンハイドレートが自然にできうる条件は、海底および海底面下の地層の他に、北極に近いカナダ、アラスカ、シベリアやチベット高地などの永久凍土地帯(年の平均気温が0℃を下回り、地中の深いところが凍っているような土地)にも存在しています。

下の図2を見てください。左脇のグラフは、図1の相平衡曲線(青線)に、海底と地下の温度の変化を重ね書きしたものです。ただし、縦軸は圧力ではなくて深度になっているので、上下が逆になっています。(下の方が、圧力が高い)

このグラフで、赤線が青線より左にある領域、つまり、温度がメタンハイドレート安定領域に入っている部分が、メタンハイドレートが存在できる範囲です。海底面付近(黒い横線)では温度が低いのでメタンハイドレートは安定していますが、地下深くに向かうと地温は徐々に上がっていくので、どこかでメタンハイドレートは安定して存在していられなくなります。その深度を「メタンハイドレート安定下限」と呼んでいて、その深さは海の深さと、地温勾配(深さに応じてどれくらい温度が変わるか)で変化しますが、数百〜2000mくらいまでの水深の場所であれば、概ね海底面下4−500m以内です。通常の石油・天然ガスは、地下、あるいは海底面下数千メートルのところから生産されることが多いので、メタンハイドレートは、海の深さは深いけれど、地面の深さは比較的浅いところに存在しているということになります。

図2相平衡曲線と海底と地下の温度の変化(左側)とメタンハイドレートの存在形態(右側)

図2 相平衡曲線と海底と地下の温度の変化(左側)とメタンハイドレートの存在形態(右側)

そのような海底の比較的浅いところは、固い岩盤ではなくて、地表付近の土砂に近い「未固結の堆積物」からできています。メタンハイドレートは、そのような比較的弱く柔らかい地層の中で、様々なあり方で存在しています。

海底面付近に塊状に存在している「表層型メタンハイドレート」や、海底の緻密(ちみつ)な泥層に、割れ目を埋めるように存在している「泥層内ハイドレート」は、見た目ですぐにわかります。

一方、比較的粒の大きい砂からなる地層の、砂粒子のすき間を埋めるように存在しているのが「砂層型メタンハイドレート」です。このようなメタンハイドレートのあり方は、通常の油田・ガス田で原油やガスが存在しているあり方と一緒です。原油も、やはり砂層、あるいは砂岩層で粒子のすき間を埋めるように存在しています。このような地層では、一旦メタンハイドレートがガスと水に変われば、原油を井戸から汲みあげるように、ガスを地表に取り出せる可能性があります。つまり、石油開発の技術の応用でメタンハイドレートをエネルギー源として利用できる可能性があり、そのため他のタイプのメタンハイドレートよりも先に生産手法の研究が進みました。

その砂層型メタンハイドレートですが、実際にはどんな姿をしているのでしょうか。下の写真で、透明のチューブの中にあるのが、メタンハイドレートを含んだ堆積物です。一見普通の砂の塊に見えますが、中は高い圧力が保たれていて、メタンハイドレートが分解されずに残っています。

図3(東部南海トラフの)水深約1,000m、海底面下約300mから採取されたメタンハイドレートを含む堆積物(直径5cm)

図3(東部南海トラフの)水深約1,000m、海底面下約300mから採取されたメタンハイドレートを含む堆積物(直径5cm)

砂粒の間のメタンハイドレートは小さくて目には見えませんが、電子顕微鏡写真では、白っぽく見える砂と灰色のメタンハイドレートおよび氷、それらの間のすき間が区別できます。砂粒の間にメタンハイドレートがあるというのがどんなイメージかわかると思います。

図4 砂粒子の隙間(孔隙)にあるメタンハイドレートの電子顕微鏡写真(鈴木他、2009)**鈴木清史・海老沼孝郎・成田英夫 (2009), メタンハイドレートを胚胎する砂質堆積物の特徴とメタンハイドレート胚胎メカニズムへの影響, 地学雑誌, 118(5), 899—912.

図4 砂粒子の隙間(孔隙)にあるメタンハイドレートの電子顕微鏡写真(鈴木他、2009)*
*鈴木清史・海老沼孝郎・成田英夫 (2009), メタンハイドレートを胚胎する砂質堆積物の特徴と
メタンハイドレート胚胎メカニズムへの影響, 地学雑誌, 118(5), 899—912.

メタンハイドレートがあるところ

キーポイント
  • メタンハイドレートがあるのは、メタンが生まれ、温度・圧力条件が整い、ハイドレートを収める堆積物が存在しているところ。
  • 世界中でメタンハイドレートは見つかっている。

メタンハイドレートができるためには、もちろんメタンがなければいけません。そのメタンはどこから来るのでしょうか?地下のメタンの原料は、もともと陸や海の生物の死骸ですが、長い年月、陸から運ばれた砂や泥といった「堆積物」と一緒に海底に降り積もったこのような生物の死骸は、二つの作用でメタンに変わります。

一つは地下に住んでいる微生物の働きです。泥や砂の中に住んでいる微生物は、生物の死骸を構成する「有機物」、みなさんの身体を作っているタンパク質や脂肪や炭水化物を、多くのプロセスを経てより小さな分子に変えていきます。一番小さくなった有機物がメタンです。

また、もっと深いところに埋まった有機物は、地下の高い温度と圧力によって分解されていきます。これは石油が作られるのと同じプロセスです。分解されてできたメタンは水よりも軽いので、堆積物の粒子のすき間や断層の間を通って、浮力によって浅い方に移動していきます。

こうして生まれたメタンをうまく地下にとどめておくことができる堆積物があれば、メタンハイドレートは地下にまとまった形で存在できます。資源として開発するためには、この「まとまって存在する」という点が重要です。広く、まばらにちらばっていたら探すのも集めるのも大変ですが、一箇所にまとまって存在していれば、そこに生産基地を作ることで一度にたくさん生産できます。広がりと厚さがある砂層は、メタンハイドレートを溜めておくのに理想的です。そのことも、砂層型のメタンハイドレートの研究が先行した理由の一つです。

このように、メタンハイドレートが存在するには、先に述べた温度・圧力の条件とともに、メタンとその原料の有機物が存在すること、メタンハイドレートを貯めておくのに適当な地層が存在することの三つの条件が必要です。

20世紀の後半から多くの科学者がメタンハイドレートに興味を持って研究を進め、実際にメタンハイドレートを発見してきました。下の地図は、メタンハイドレートが直接取り出されたり、あるいは間接的な証拠から存在が推定される場所を示しています。

大陸の周辺に集中して見えますが、これはさきほど述べた三つの条件(温度・圧力、メタン、堆積物)が満たされている場所がそのようなところに存在するからです。しかし、赤点のない場所にもまだ見つかっていないメタンハイドレートがあるかもしれません。日本の周辺に赤点が多いのは早い時期から調査が進められたからです。また、油田・天然ガス田開発が盛んなメキシコ湾、北海、あるいはアラスカやシベリアの陸上でもメタンハイドレートが見つかっていますが、これはメタンも石油も同じような原料とプロセスから作られるからです。最初の話に戻りますが、メタンハイドレートは、ちょっと特別な形をした天然ガス資源です。

ただ、井戸を掘ったら自然に地表に上がってくる天然ガスと違い、エネルギーを得るには一工夫が必要です。

ガスハイドレートがあると推定されている地点

ガスハイドレートがあると推定されている地点

USGSデータ(https://www.sciencebase.gov/catalog/item/5eb413a282ce25b5135a9f2a)に
MH21-Sが日本周辺情報を追記

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