MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

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生態系への環境影響について

海洋生態系とは

海洋生態系とはなに?

 海洋の面積はおよそ3億6千万km2あり、地球の表面積の約70%を占めると言われています。その平均水深は約3,800mもあり、世界最深部のマリアナ海溝では約1万1千mに達します。つまり、海洋は広く・深いのです。

 かつて、深い海には生物は殆ど生息しておらず、特に水深1,000mを超えるような場所は無生物地帯であると信じられてきました。しかし、19世紀後半から始まった探検航海や、その後の科学技術の進歩に伴う海洋調査により、マリアナ海溝の最深部でさえ活発な生物活動が繰り広げられていることは、今日、誰もが知る事実になっています。また、海洋には微生物からクジラなどの大型海棲哺乳類までありとあらゆる生物群が生息しており、様々な物理・化学的な影響を受けながら相互に関連しあっていることもわかっています。図1は、海洋に生息している生物の相互関係等を模式的に表したものです。“海洋生態系“とは、まさにこの図に示すような生物間で営まれている複雑な相互関係を総称した言葉です。

図1 海洋生態系の模式図

図1 海洋生態系の模式図

「海の食物連鎖」

−表層付近の生物たち−

 海洋に生息する生物の活動は、水深がおよそ200mまでの浅海部が最も活発です。では、なぜこの浅海部での生物の活動が活発なのでしょうか?そうです。光です。海表面を照らす太陽光は様々な海洋生物の生命維持にとって欠かすことができない存在です。海洋学ではこの太陽光が海の中に届く厚さを、光が有る層と書いて”有光層”と称しています。水深がおよそ200mまでで生物量が多いのは、まさにこの有光層がその水深に相当するからに他なりません。ここでは、陸上と同じように太陽光を利用して活発に増殖する植物が生息しています。皆さんが良く知っている植物プランクトンと呼ばれる生物群です。植物プランクトンには、藍藻類、鞭毛藻類、珪藻類(図2)など様々な大きさと形状をしたものが存在します。

図2 植物プランクトン

図2 植物プランクトン

 植物プランクトンは何かを食べて成長するわけではなく太陽光を利用し成長するので“基礎生産者”と呼ばれ生態系の根幹を成す生物になります。植物プランクトンは、これを餌とする動物プランクトンに食べられ、さらにこの動物プランクトンを捕食する肉食性の動物プランクトンに食べられ、これらは魚類の稚魚等のより大きな生物に食べられていく流れが存在します。この食う食われるの関係を“食物連鎖”と称し、海洋に生息する生物群の相互関係を表す言葉として一般的に呼ばれています。でも、有光層内での生物相互の関係は、実はもっと複雑です。海に生息する生物も、生き物ですからその生命活動に伴っていろんな排泄物を出します。あるいは、陸域からは色々な種類の有機物や無機物が流れ込んできます。

 このような排泄物や有機・無機物は、バクテリアと呼ばれる微生物によって分解されていきます。実は、海の中にはこのバクテリアを好んで食べる微小な生物が生息しています。微小鞭毛虫や繊毛虫と呼ばれる微小なプランクトンであり、これらもまた、より大型の肉食性の動物プランクトンや魚類などに捕食されていきます。つまり、生物の食う食われるの出発点が植物プランクトンではなく、バクテリアというわけです。しかも、捕食者の排出物や死骸は、再びバクテリアによって分解されるため、食う食われるの関係が一方通行ではなくぐるぐると回っているのです。このため、このようなバクテリアを介した流れは連鎖とは表現せず“微生物食物環”と呼んでいます。

−もっと深いところとのつながり−

 海洋表層部で繰り拡げられているこのような複雑な生物相互の関係は、海洋の中層域や深層域へと伝搬していきます。その伝搬物(デトリタスと称する。)は、生物の排泄物や死骸であったりします。伝搬物はバクテリアの分解や動物プランクトン等による捕食と再排泄を繰り返しながら沈降し、やがて海底面に到達・沈積することになります。ここには、“底生生物”と呼ばれる生物が生息しており、伝搬物はこれら生物の貴重な餌になっています(こちらの記事もご参考下さい)。つまり、海洋表層部で生産された有機物は、海底付近に生息する生物の生活を支えていることになるのです。このように、これら太陽光をエネルギーの出発点として構成されているものを“光合成生態系”と呼んでいます。

−光の当たらない世界で−

 他方、海洋には太陽光のエネルギーに全く依存しない生態系も存在します。海洋には、海底から湧き出すメタンなどをエネルギー源として生命活動をおこなっている特殊な生物群集が存在しています(図3)。これらの生物群集で構成されている生態系は、“化学合成生態系“と呼ばれ、光合成生態系とは区別されています。

図3 化学合成生態系で見られる生物群集の例

図3 化学合成生態系で見られる生物群集の例

 このように、海洋生態系とは、そこ生息する生物が初期のエネルギー源として何を利用するかによって異なる生態系で構成されている、生物の営みの場であると言えます。

 MH21-Sでは、日本周辺の海洋に存在するメタンハイドレートの商業生産を目指しています。開発に際しては、このような海洋の生態系に対して影響を及ぼすことが無いよう、細心の注意を払いながら様々な取り組みを進めています。

 

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