MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

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長期陸上産出試験

 米国エネルギー省(DOE)傘下のエネルギー技術研究所(NETL)と協働で、アラスカ州ノーススロープのプルドーベイ鉱区において、メタンハイドレートの長期陸上産出試験の開始に向けて準備を進めています。2022年10月~2023年2月に掘削作業を実施し、2023年度早期のガス生産の開始に向け地上試験設備の設置作業を行っています。産出試験では、長期生産挙動データの取得に加えて、技術的課題の解決策の検証、長期生産に伴う課題の抽出等の試験目的達成を目指します。 
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地上試験設備設置作業(2023年3月-4月初旬)

坑井基地では、生産水の処理量を減らすために水を蒸発させる大型設備(Evaporator)、生産したガスを燃料ガスとして使用するための発電機、敷地内を車両などが安全に通行するために配管を橋のように設置したパイプブリッジ、その他各種地上試験設備の設置作業を鋭意進めています。

2022年より長期陸上産出試験に向けた現場作業が本格化していますが、「Alaska Safety Alliance」による安全講習を受講しないとノーススロープの作業現場には入れません。MH21-Sメンバーも現場に出張する前には、同講習を修了した上で、現地では別途オペレーターによる安全講習を受講しています。安全講習では、作業自体の危険性を理解するための説明にとどまらず、坑井基地から外れて周囲のツンドラに立ち入ってはいけない等の具体的なルールの説明もあり、環境保全に関する厳しい規制等が周知されます。
また、冬季に作業現場に立ち入る場合は、全身を覆う防寒着の持参・装着が義務付けられており、現場で働く人達が安全かつ効率的に作業できるよう、現地の気温・風速・体感温度が毎日報告されます。現場のあちこちに掲示されている「Wind Chill Chart」では、外気温・風速に加え凍傷になるまでの目安時間が一目で確認できます。
4月は、3月に比べ平均気温も10℃ほど上がるものの、最低気温は一般的な冷凍庫内の温度(-18℃前後)と変わりません。 

出典: National Weather Service ホームページより(2023/4/23閲覧)

出典: National Weather Service ホームページより(2023/4/23閲覧)
https://www.weather.gov/safety/cold-wind-chill-chart

生産井(PTW-1)の仕上げ作業を含め3坑井の掘削完了(2023年2月)

生産井(PTW-1)では、メタンハイドレート層からのガス生産に必要な坑内機器や装置を設置する仕上げ作業として、ガス生産過程における坑内での再ハイドレート化を防止するための坑内ヒーターや、電動水中ポンプ、出砂対策装置等の降管・設置作業を行いました。2022年10月9日(現地時間)から開始した3坑井(データ取得井と生産井2坑)の掘削作業は、143日間大きな事故等が発生することなく、2023年2月28日(現地時間)に完了し、いずれの坑井においても概ね予想通りの深度で、想定通りの厚さのメタンハイドレート層を確認できました。2月初旬には寒波により-35℃を下回る寒さとなり、中旬には、-29~-37℃とさらに厳しい寒さが続く中の作業となりました。
引き続き、地上試験設備の設置作業を進め、ガス生産開始に向け鋭意作業を進めています。

左側3坑が今回掘削した坑井。試掘井は2018年に掘削済み。

左側3坑が今回掘削した坑井。試掘井は2018年に掘削済み。

生産井(PTW-1)の掘削作業(2023年1月中下旬)

2022年12月末から開始した生産井(PTW-1)の掘削作業を続けるとともに、地上試験設備の一部設置作業など早期のガス生産開始に向け並行してできる作業を可能な限り進めています。激しい吹雪のため屋外での作業が困難な日もありましたが、現場の安全基準に従い状況に応じて待機などしつつ、現場作業は継続しています。 また、ノーススロープの掘削現場以外でも、昨年10月の掘削作業開始前から、アンカレジにあるオペレーターのオフィスにMH21-Sメンバーが交替で常駐し、米国側と協働で作業状況のタイムリーな把握と必要に応じて米国側との協議などを行っています。

生産井(PTW-2)の掘削終了と生産井(PTW-1)の掘削作業(2022年12月初旬-2023年1月中旬)

掘削現場では、年末年始も24時間休みなく作業が続けられました。
ケーシングパイプ外側に温度・圧力・ひずみ等の各データを取得するためのセンサーケーブルを固定しながら坑内に下げていき、センサーケーブルの動作確認を行う等の作業を実施し、生産井(PTW-2)の掘削作業が終わりました。続いて生産井(PTW-1)の掘削を2022年12月末から開始しました。
また、産出試験をできるだけ早く開始できるようにするため、地上試験設備の一部の設置作業も掘削作業と並行して進めています。

データ取得井(GDW)の掘削終了と生産井(PTW-2)の掘削(2022年11月-12月中旬)

データ取得井(GDW)での圧力コアリング作業で取得されたコアは、日米ジョイントチームにより現地で分析を行ったあと、各機関に送られ、さらに詳細な分析を行います。

11月20日(現地時間)にデータ取得井(GDW)の掘削を終え、11月24日より生産井(Production Test Well:PTW-2)の掘削を開始しました。現地の気温は-30℃を下回る日もあり、凍てつく寒さに加え、この時期のノーススロープでは一日中太陽は昇らず、空がうっすら明るむのみとなります。

圧力コアリング作業実施(2022年10月下旬~11月上旬)

10月下旬から11月上旬にかけて圧力コアリング(注)の作業を実施しました。取得されたコア(円柱状の地質サンプル)を分析することによって、メタンハイドレートの胚胎量の推定や浸透性、力学的な特性等の地層性状の把握に資する有益な情報が得られることが期待されます。
現場での作業は、昼夜問わず続けられています。また、関連法規に基づき、坑口に取り付けてある暴噴防止装置(BOP)のテストを定期的に行うなど、安全第一で進めています。
11月初旬でも現場は−20℃を下回る日もあり、今後は寒さが一段と厳しくなっていきますが、掘削作業は続けられていきます。
(注)圧力コアリング:地層に含まれるメタンハイドレートを分解させないよう、圧力を保持したままの状態でコアを回収するコアリング手法。詳細は、こちらをご参照ください(地下のメタンハイドレートをそのまま取りだす~圧力コアリング)。

注2:太陽の両側にあらわれる光輝の強い点。空中の氷晶による光の屈折でおこる暈(かさ)の一種。
  白色または薄い色彩を帯びる。(広辞苑より)

掘削作業開始(2022年10月9日(現地時間))

プルード―ベイ鉱区は、夏季は一面湿地帯となるエリアですが、産出試験を実施する場所は既設の道路や坑井基地として使用可能な砂利を敷いた敷地があり、年間を通して作業が継続できます。
陸上産出試験のオペレータであるASRC Energy Services Alaska社が、当該鉱区で掘削作業を実施するための許認可をアラスカ天然資源局から8月に取得し、現場の整地作業を始め、掘削のための準備作業を着々と進めてきました。

10月9日(日)(現地時間)にデータ取得井(Geo Data Well(GDW))の掘削が開始され、現在は24時間体制で掘削作業が継続されています。 ノーススロープでは雪が降り始め、気温は氷点下とすでに日本の真冬並みの寒さですが、今後さらに厳しい環境になっていきます。

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