MH21-Sロゴ 砂層型メタンハイドレート研究開発

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長期陸上産出試験

 米国エネルギー省(DOE)傘下のエネルギー技術研究所(NETL)と協働で、アラスカ州ノーススロープのプルドーベイ鉱区において、メタンハイドレートの長期陸上産出試験を実施しています。産出試験では、長期生産挙動データの取得に加えて、技術的課題の解決策の検証、長期生産に伴う課題の抽出等の試験目的達成を目指します。
(写真はギャラリーでもご覧いただけます リンクはこちら

長期陸上産出試験継続中/ガス生産開始から6か月経過(2024年4月)

 4月になり少し寒さも和らいできているものの、-13℃~-25℃と日本よりはるかに厳しい環境のノーススロープ試験現場では、2023年10月24日のガス生産開始から数え、2024年4月24日で6か月が経過しました。これは、日本が関与してきた産出試験の中で単一坑井におけるガス生産期間の最長記録となり、陸上産出試験における約30日間(2012年:Ignik Sikumi (注1))、海洋産出試験における24日間(2017年:第2回海洋産出試験の2坑目(注2))を大幅に上回るものとなります。
 アラスカ長期陸上産出試験で生産されたガスは、試験設備の発電機や蒸発器等のための燃料として活用されています。これは、メタンハイドレートからのガスをエネルギー源として使用した世界初の取り組みとなります。
 また、アンカレジ市では4月10日から11日にかけて、日米の代表者・サイエンティスト・エンジニアが一堂に会して技術会議(Research & Development Committee Meeting(RDC))が開催されました。3月までの試験データを日米双方の関係者でレビューした上で、4月以降の産出試験方針についての議論が行われました。
 さらに、RDC参加のためにアラスカ入りしたレザバーエンジニアが、現地産出試験状況を確認するためノーススロープの試験現場を訪問し、各種情報を入手してきました。これらの情報は今後のデータ解析を行う上でのインプットになります。
 4月24日時点においても、現場作業開始以降、休業災害無し(ZERO LTI(Lost Time Injury))を継続し、安全に作業を行っています。
 取得したデータはMH21-S及び米側パートナーにおいて鋭意解析中です。

(注1)2012年:Ignik Sikumi
(注2)2017年:第2回海洋産出試験

長期陸上産出試験継続中(2024年3月)

ノーススロープの試験現場では、-31℃~-44℃と大変寒さの厳しい環境の中、2024年3月15日時点においても休業災害無し(ZERO LTI(Lost Time Injury))で、安全に産出試験を継続中です。
電動水中ポンプ(ESP)で水を汲み上げることによりメタンハイドレート層の圧力を下げ、メタンハイドレート(MH)からメタンガスを生産する試験を継続しています。MHが分解しメタンガスが生産される際に、ガス量が一時的に増えるなどの原因で、ESPの入り口にガスが入り込み、生産水を汲み上げるESPの性能が発揮できなくなることがあります。このような現象(ガスロック)に対しては、一時的に減圧を中断して問題解決を優先的に取り組むことにより、大きなトラブルなく産出試験が継続できており、ガス生産から4か月以上が経過しています。

一方、アンカレジ市では、日本側メンバーがオペレータのオフィスに滞在し、米側パートナー及びオペレータと毎日、必要な場合は時間を問わず連絡を取りながら、試験方針等をタイムリーに協議しています。協議した内容は、アンカレジ市のオペレータのオフィスから、ノーススロープの試験現場に速やかに伝えられ、日々の現場作業が実施されています。

エネルギー源となるメタンハイドレート/メタンガス燃焼

2023年10月24日(現地時間)からガス生産を開始しています。MH21-Sメンバーは引き続きアンカレジ市のオペレータのオフィスに交替で常駐して、作業状況をリアルタイムで把握し、米国側パートナー及びオペレータと密接にコミュニケーションを取りながら産出試験を実施しています。
産出試験のための井戸の掘削作業中、2022年10月にメタンハイドレートを含む地層から試料を採取しています。地層試料を水の中に入れると中に含まれるメタンハイドレートからメタンガスが出てきて、火をつけると燃えます。このように、見た目では砂の固形物ですが、掘削地点の地下にはエネルギー源となるメタンガスを含むメタンハイドレートが存在していることが確認できます。

『メタンハイドレートの基礎情報/メタンハイドレートとは』 はこちらからご覧いただけます。

産出試験を開始(2023年9月)

2023年2月末に掘削作業を完了してから、ガス生産に向けた地上試験設備設置作業等の試験開始に向けた準備作業を進めて参りましたが、9月19日(現地時間)、PTW-1の水中電動ポンプを動かし始めたことにより、産出試験を開始しました。その後、10月24日(現地時間)には、B層のメタンハイドレート分解によるガスの生産が確認されています。
今後は、長期の生産を続けることを目指し、各坑井(GDW, PTW-1, PTW-2, STW)の坑内に設置されている温度や圧力等のセンサーにて地層の変化を観測、メタンハイドレートの生産挙動を理解し日本における商業化に向けた研究開発に活用していきます。
なお、生産されたガスは産出試験施設で自家消費することとしています。メタンハイドレートから生産されたメタンガスをエネルギー源として活用する計画は世界で初めての取り組みとなります。

地上試験設備の設置作業(2023年6月中下旬)

ノーススロープの試験現場では、産出試験の開始に向けて、地上試験設備の設置作業が継続して行われています。

長期陸上産出試験のプロジェクトは、日米間(DOE/NETLおよびJOGMEC)で運営委員会(Steering Committee)を設置し、プロジェクトの方針などを協議・合意しながら遂行しています。6月後半にアンカレジで運営委員会が日米双方の関係者参加の下開催されました。また、運営委員会メンバー等がノーススロープにある試験現場を訪問し、試験開始に向けた準備状況の確認を行いました。

試験に利用する掘削済みの坑井の上にはウェルハウスが設置され、日米の国旗も掲揚されました。

MH21-Sは2018年12月に試掘井を掘削し、メタンハイドレートの賦存を確認しました。試掘現場エリアのデッドホースに雑貨店があり、外壁に訪問者がステッカーを貼っていくようです。試掘調査をした頃の写真と比べると、ステッカーの数がはっきりと増えていて、時間の流れを感じます。

坑井間地震波探査の実施(2023年6月上旬)

6月上旬、MH21-Sメンバーの物理探査技術者がノーススロープの試験現場へ行き、坑井間地震波探査(Cross-Well-Tomography: CWT)を実施しました。産出試験開始前にCWTを実施することで、初期状態のメタンハイドレート層の物性や不均質性を検討するためのデータが取得できます。また、ガス産出試験後に再度データを取得して試験前のデータと比較することにより、ガス生産によりメタンハイドレート層に生じた物性の変化を抽出できます。試験現場の坑井に設置した光ファイバー(Distributed Acoustic Sensing:DAS)により充実したデータの受振がなされました。また、坑井間の距離が比較的短いこともあり、高解像度のデータが取得できています。

ノーススロープの試験現場へは、空路で東京からアンカレジ空港を経由し、デッドホース空港へ移動、その先は車となります。東京からアンカレジへは直行便がないため米国本土を経由する必要があり、またアンカレジからデッドホースまでの便は限られているため、試験現場までは1日を優に超える長旅となります。
6月上旬のアンカレジは15℃前後でしたが、北へ1,000キロメートル以上離れたノーススロープは0℃前後と気温差も相当ありました。夜中でも太陽が沈まない白夜の試験現場では、引き続き地上設備設置作業が行われており、同時並行で今回の坑井間地震波探査が実施されました。

コア試料の分析作業

2022年10~11月の掘削時に取得したコア試料は、米国側と日本側の各々で詳細な分析が続けられています。
2023年4月、産業技術総合研究所北海道センターに、圧力容器に入った保圧コアを載せたコンテナが到着しました。同センターでは、水・ガスの浸透特性やハイドレート結晶特性等の評価作業を行っています。直径5 cm×長さ10 cmのコア試料を詳細に分析するには、1~2週間程度かかるため、全てのコア試料の分析を終え貯留層全体を正確に把握するには約1年の期間が必要です。これらの分析結果はハイドレート貯留層の物理化学特性情報の確度を高め、長期的なガス生産挙動の予測等に大きく寄与することが期待されています。

地上試験設備設置作業(2023年3月-4月初旬)

坑井基地では、生産水の処理量を減らすために水を蒸発させる大型設備(Evaporator)、生産したガスを燃料ガスとして使用するための発電機、敷地内を車両などが安全に通行するために配管を橋のように設置したパイプブリッジ、その他各種地上試験設備の設置作業を鋭意進めています。

2022年より長期陸上産出試験に向けた現場作業が本格化していますが、「Alaska Safety Alliance」による安全講習を受講しないとノーススロープの作業現場には入れません。MH21-Sメンバーも現場に出張する前には、同講習を修了した上で、現地では別途オペレーターによる安全講習を受講しています。安全講習では、作業自体の危険性を理解するための説明にとどまらず、坑井基地から外れて周囲のツンドラに立ち入ってはいけない等の具体的なルールの説明もあり、環境保全に関する厳しい規制等が周知されます。
また、冬季に作業現場に立ち入る場合は、全身を覆う防寒着の持参・装着が義務付けられており、現場で働く人達が安全かつ効率的に作業できるよう、現地の気温・風速・体感温度が毎日報告されます。現場のあちこちに掲示されている「Wind Chill Chart」では、外気温・風速に加え凍傷になるまでの目安時間が一目で確認できます。
4月は、3月に比べ平均気温も10℃ほど上がるものの、最低気温は一般的な冷凍庫内の温度(-18℃前後)と変わりません。 

出典: National Weather Service ホームページより(2023/4/23閲覧)

出典: National Weather Service ホームページより(2023/4/23閲覧)
https://www.weather.gov/safety/cold-wind-chill-chart

生産井(PTW-1)の仕上げ作業を含め3坑井の掘削完了(2023年2月)

生産井(PTW-1)では、メタンハイドレート層からのガス生産に必要な坑内機器や装置を設置する仕上げ作業として、ガス生産過程における坑内での再ハイドレート化を防止するための坑内ヒーターや、電動水中ポンプ、出砂対策装置等の降管・設置作業を行いました。2022年10月9日(現地時間)から開始した3坑井(データ取得井と生産井2坑)の掘削作業は、143日間大きな事故等が発生することなく、2023年2月28日(現地時間)に完了し、いずれの坑井においても概ね予想通りの深度で、想定通りの厚さのメタンハイドレート層を確認できました。2月初旬には寒波により-35℃を下回る寒さとなり、中旬には、-29~-37℃とさらに厳しい寒さが続く中の作業となりました。
引き続き、地上試験設備の設置作業を進め、ガス生産開始に向け鋭意作業を進めています。

左側3坑が今回掘削した坑井。試掘井は2018年に掘削済み。

左側3坑が今回掘削した坑井。試掘井は2018年に掘削済み。

生産井(PTW-1)の掘削作業(2023年1月中下旬)

2022年12月末から開始した生産井(PTW-1)の掘削作業を続けるとともに、地上試験設備の一部設置作業など早期のガス生産開始に向け並行してできる作業を可能な限り進めています。激しい吹雪のため屋外での作業が困難な日もありましたが、現場の安全基準に従い状況に応じて待機などしつつ、現場作業は継続しています。 また、ノーススロープの掘削現場以外でも、昨年10月の掘削作業開始前から、アンカレジにあるオペレーターのオフィスにMH21-Sメンバーが交替で常駐し、米国側と協働で作業状況のタイムリーな把握と必要に応じて米国側との協議などを行っています。

生産井(PTW-2)の掘削終了と生産井(PTW-1)の掘削作業(2022年12月初旬-2023年1月中旬)

掘削現場では、年末年始も24時間休みなく作業が続けられました。
ケーシングパイプ外側に温度・圧力・ひずみ等の各データを取得するためのセンサーケーブルを固定しながら坑内に下げていき、センサーケーブルの動作確認を行う等の作業を実施し、生産井(PTW-2)の掘削作業が終わりました。続いて生産井(PTW-1)の掘削を2022年12月末から開始しました。
また、産出試験をできるだけ早く開始できるようにするため、地上試験設備の一部の設置作業も掘削作業と並行して進めています。

データ取得井(GDW)の掘削終了と生産井(PTW-2)の掘削(2022年11月-12月中旬)

データ取得井(GDW)での圧力コアリング作業で取得されたコアは、日米ジョイントチームにより現地で分析を行ったあと、各機関に送られ、さらに詳細な分析を行います。

11月20日(現地時間)にデータ取得井(GDW)の掘削を終え、11月24日より生産井(Production Test Well:PTW-2)の掘削を開始しました。現地の気温は-30℃を下回る日もあり、凍てつく寒さに加え、この時期のノーススロープでは一日中太陽は昇らず、空がうっすら明るむのみとなります。

圧力コアリング作業実施(2022年10月下旬~11月上旬)

10月下旬から11月上旬にかけて圧力コアリング(注)の作業を実施しました。取得されたコア(円柱状の地質サンプル)を分析することによって、メタンハイドレートの胚胎量の推定や浸透性、力学的な特性等の地層性状の把握に資する有益な情報が得られることが期待されます。
現場での作業は、昼夜問わず続けられています。また、関連法規に基づき、坑口に取り付けてある暴噴防止装置(BOP)のテストを定期的に行うなど、安全第一で進めています。
11月初旬でも現場は−20℃を下回る日もあり、今後は寒さが一段と厳しくなっていきますが、掘削作業は続けられていきます。
(注)圧力コアリング:地層に含まれるメタンハイドレートを分解させないよう、圧力を保持したままの状態でコアを回収するコアリング手法。詳細は、こちらをご参照ください(地下のメタンハイドレートをそのまま取りだす~圧力コアリング)。

注2:太陽の両側にあらわれる光輝の強い点。空中の氷晶による光の屈折でおこる暈(かさ)の一種。
  白色または薄い色彩を帯びる。(広辞苑より)

掘削作業開始(2022年10月9日(現地時間))

プルード―ベイ鉱区は、夏季は一面湿地帯となるエリアですが、産出試験を実施する場所は既設の道路や坑井基地として使用可能な砂利を敷いた敷地があり、年間を通して作業が継続できます。
陸上産出試験のオペレータであるASRC Energy Services Alaska社が、当該鉱区で掘削作業を実施するための許認可をアラスカ天然資源局から8月に取得し、現場の整地作業を始め、掘削のための準備作業を着々と進めてきました。

10月9日(日)(現地時間)にデータ取得井(Geo Data Well(GDW))の掘削が開始され、現在は24時間体制で掘削作業が継続されています。 ノーススロープでは雪が降り始め、気温は氷点下とすでに日本の真冬並みの寒さですが、今後さらに厳しい環境になっていきます。

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