米国アラスカ州でメタンハイドレート層から10か月間のガス産出試験を実施 ~長期陸上産出試験を終了、商業化に向け更なる研究開発を推進~
MH21-SメンバーのJOGMECは、メタンハイドレートの商業化に不可欠な長期生産挙動のデータを得るために、米国エネルギー省傘下の国立エネルギー技術研究所と協働で、アラスカ州において2023年9月19日(現地時間)より実施していたメタンハイドレート層からのガス産出試験を2024年7月30日(現地時間)に終了しました。
10か月間を超えるガス産出試験により、長期のガス生産に伴う課題の抽出や、長期の生産挙動データを取得することができました。また、生産したガスは、試験設備の発電機や蒸発器等の燃料として自家消費し、メタンハイドレート層から生産したガスを世界で初めてエネルギー源として使用しました。
今後、ガス産出試験に伴うメタンハイドレート層の変化を捉えるデータの取得を継続し、今般の試験を通じて得られた知見・経験をもとに、取得されたデータの解析を行い、我が国周辺海域での次回海洋産出試験や将来の商業化に向けて、更なる研究開発を進めてまいります。
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ガス産出試験中のノーススロープの試験現場(2024年7月撮影)
JOGMECは、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy : DOE)傘下の国立エネルギー技術研究所(National Energy Technology Laboratory : NETL)と協働で、アラスカ州ノーススロープのプルドーベイ鉱区(以下、PBU)においてメタンハイドレートの長期陸上産出試験を実施しています。2023年9月19日(現地時間)に減圧の開始により始まったガス産出試験は、同年10月24日(現地時間)にガス生産を確認し、2024年7月30日(現地時間)に減圧を停止して終了しました。
1坑井あたりのガス産出試験期間としては、2017年に実施した第2回海洋産出試験での29日間(ガス生産期間は24日間)が最長でしたが、今回10か月間を超えるガス産出試験を実現し、長期のガス生産に伴う課題を抽出し、長期の生産挙動データを取得することができました。また、生産したガスは、試験設備の発電機や蒸発器等の燃料として自家消費しており、世界で初めてメタンハイドレートからのガスをエネルギー源として活用し、将来の商業化(注)に向けて生産ガスの利用実績を作ることができました。
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ガス産出試験中の現場(2023年10月撮影)
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ガス産出試験中の現場(2024年4月撮影)
本プロジェクトは、アラスカ州天然資源局(State of Alaska Department of Natural Resources : DNR)およびPBU鉱区権者(Hilcorp North Slope社、ExxonMobil Alaska社、ConocoPhillips Alaska社、Chevron USA社)の協力のもと、DOE/NETLとJOGMEC間で国際共同研究体制を構築して実施されています。これまで得られなかった長期生産挙動データ等の取得が実現したことは、日米間のプロジェクト運営が機能的に行われた成果のひとつです。
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日米の代表者・サイエンティスト・エンジニアが一堂に会し、ガス産出試験に関する技術内容等について協議する技術委員会(2024年4月、アンカレジ市にて)
今後は、ガス産出試験に伴うメタンハイドレート層の変化を捉えるデータの取得を継続し、今般の試験を通じて得られた知見・経験をもとに、取得されたデータの解析を行い、長期的なガスの生産挙動把握・技術的課題の解決策検証・長期生産に伴う課題への対応等につなげ、我が国周辺海域で行う次回海洋産出試験など今後の商業化に向けた取り組みに活かしていく予定です。
また、本産出試験では、現場作業開始から整地作業・掘削作業・設備設置作業・試運転を経てガス産出試験まで、オペレータにより安全に産出試験及び関連作業が実施されており、休業災害ゼロを達成しています。プロジェクト完了時まで安全作業を継続しプロジェクト全体での休業災害ゼロ達成を目指しています。
注:海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を改定しました(2024年3月22日 経済産業省)
(URL)https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240322001/20240322001.html
【背景】
メタンハイドレートは、メタンガスと水が低温・高圧の特定の条件下で氷状の固体として形成される物質で、主に極地(永久凍土地帯)の地層中や大水深エリアの海底面下の比較的浅い層などに存在しています。我が国周辺海域にも深海の海底面下に広くメタンハイドレートの存在が確認されており、過去2回、渥美半島から志摩半島の沖合(第二渥美海丘)において海洋産出試験を実施していますが、数週間程度の連続生産を実現したものの、メタンハイドレートの分解範囲は坑井周辺に限られ、ガス生産挙動の長期的な傾向は確認できておりません。
将来の商業化に向けては、長期の生産挙動を見極めることが不可欠であるため、海洋に比べて相対的に試験の制御が容易でインフラの整っているアラスカ州陸上での長期産出試験を計画しました。同試験では、長期生産挙動データの取得に加えて、技術的課題の解決策の検証、長期生産に伴う課題の抽出等を目的としています。
なお、本プロジェクトは経済産業省資源エネルギー庁からの委託事業として実施されています。
■参考
第43回メタンハイドレート開発実施検討会(2023年12月21日開催、経済産業省)
資料4 アラスカ長期陸上産出試験 現場作業の進捗と試験状況(MH21-S)
(URL)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methane_hydrate/pdf/043_04_00.pdf
第42回メタンハイドレート開発実施検討会(2023年11月6日開催、経済産業省)
資料4 アラスカ長期陸上産出試験 現場作業の進捗と試験状況(MH21-S)
(URL)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methane_hydrate/pdf/042_04_00.pdf
米国アラスカ州でメタンハイドレート層からのガス産出試験を開始~日本でのメタンハイドレート商業化に不可欠な長期生産挙動データ取得へ~(2023年10月30日)
(URL)https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00145.html
Alaska North Slope Gas Hydrates Site Visit (July 11, 2023)
(URL)https://www.energy.gov/fecm/articles/Alaska-north-slope-gas-hydrates-site-visit
メタンハイドレート:米国アラスカ州での長期陸上産出試験にスタンバイ~日本での商業化推進に不可欠な長期生産挙動データ取得へ~(2023年3月3日)
(URL)https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00092.html
第40回メタンハイドレート開発実施検討会(2023年1月13日開催、経済産業省)
資料4 アラスカ長期陸上産出試験プロジェクト進捗状況について(MH21-S)
(URL)https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methane_hydrate/pdf/040_04_00.pdf
メタンハイドレート研究開発:米国アラスカ州で坑井の掘削作業を開始-長期陸上産出試験に向けた現場作業が始動-(2022年10月14日)
(URL)https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_08_00023.html
U.S. Department of Energy and Partners to Test Gas Hydrates Reservoir Response on Alaska North Slope(October 20, 2022)
アラスカ州での長期陸上産出試験の情報を随時更新していますのでご覧ください。