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砂層型メタンハイドレート開発を担う技術者たち

砂層型メタンハイドレートの研究開発ではどのような人たちがどのような研究しているのでしょうか?石油・天然ガス開発業界では専門分野ごとに分かれて業務を行いますが、バックグラウンドには様々な専門性があります。ここでは砂層型メタンハイドレート研究にかかわる主な分野に分けてご紹介します。

地質技術者(Geologist)

 どのようにしてメタンハイドレートが生成されているのか、どこにメタンハイドレートは集まっているのか、資源としての量はどれくらいあるのかなど、メタンハイドレートに関する研究開発の基礎から生産まで、地質屋は様々なことに取り組んでいます。

 地質屋が取り組んでいる業務は、大きく3つにわけることができます。

 ひとつ目は、日本周辺海域のメタンハイドレート賦存状況の評価です。地震探査法によって得られた日本周辺海域のデータを用いて、海底下の地層中の構造を調べます。地震探査記録より、BSR(海底擬似反射面)を含む複数のメタンハイドレートを示す特徴を探し出し、メタンハイドレートの分布や集まりを検討し、資源量として評価しています。

 2つ目は、メタンハイドレートシステムの検討です地震探査記録を用いたメタンハイドレート賦存状況の評価だけでなく、石油・天然ガス探鉱でも用いている堆積盆シミュレーターを用いて、メタンハイドレートの生成・移動・集積についても検討しています。また、実際に掘削して得られた試料を用いて、メタンの生成に関する研究も行っています。

 3つ目は、産出試験に係る貯留層の評価です。上記の検討結果を踏まえ、有望そうな地域が評価されると、地震探査記録、掘削記録、試料などの分析データを用いて、三次元的に地層の物性に関するモデル:貯留層モデルを構築し、産出試験に向けての検討を進めます。この貯留層モデルは、新たにデータが得られるたびにアップデートし、より、確からしい地下モデルを更新していき、開発屋などと一緒に作業を進めていきます。

専攻:地球科学系、地学系

【コラム】

 そもそも地質といっても様々な専門家がいます。メタンハイドレートの研究開発でも、石油天然ガス探鉱と同様に、大きく「地質」と「物理探査」にわけることができます。さらにそこから、地質に関して言えば、堆積、構造地質、地球科学、微化石など、専門性に合わせて細かく枝分かれしていきます。

 MH21-S研究開発コンソーシアムにも、様々な専門性を持つ地質屋が所属しています。ディスカッションに際しては、各々の経験や独自の視点からコメントし、チーム一丸となって研究開発を進めています。

 また、産出試験や現場ではどのようなことをしているのかというと、実際に掘削が始まると、センサーによって得られた地層のデータを解析して、メタンハイドレート層の有無や賦存状況の調査を随時進め、また地層採取によって得られた試料を分析して、どのような性状、年代の地層を掘削しているか分析します。掘削中は絶えず新しいデータが得られますので、時間との闘いになり、相当な集中力と体力を要します。船上作業を終えた後は、やり遂げた達成感と無事終わった安堵感に満たされます。

コア記載の様子

コア記載の様子

物理探査技術者(Geophysicist)

メタンハイドレートが地球のどこにあるのか、調査して探し当てるのが物理探査技術者の主な役割です。メタンハイドレートは低温高圧下でのみ存在可能なので、陸上ではアラスカのような永久凍土地域、海上では大水深域において天然に存在します。砂層型メタンハイドレートは地下堆積物中の砂層の孔隙内に充填されており、在来型資源(石油・天然ガス)の探査法を応用することによって探し出すことが可能です。物理探査技術者は、反射法地震探査によって砂層型メタンハイドレートが厚く広く賦存する領域(メタンハイドレート濃集帯)を把握するための地質構造解釈を行い、メタンハイドレート濃集帯の資源量を把握するためのパラメータを推定します。

学生時代に地球物理学を専攻していた人が物理探査技術者となるケースが多いですが、それ以外の専攻者も活躍しています。

私が経験した実作業としては2018年度冬季にアラスカ永久凍土域の陸上で、地質構造調査のためにVSP探査を行ったことが特に印象に残っています。外気温が-30度、動きにくい防寒具、冷えきった昼食、トイレが無い等、特殊な現場に出向いてデータを取得しました。そのような環境で取得したデータを持ち帰り、アラスカの地質構造を解釈したときには感慨深いものがありました。

アラスカ永久凍土の現場写真

アラスカ永久凍土の現場写真

作井技術者(Drilling Engineer)

 水深1,000mにも達する深い海の底の、さらに300~400mの地中にあるメタンハイドレートから、メタンガスを取り出したり、メタンハイドレートがどのような状態で存在するのかを調査したりするための井戸を掘る役割を担っています。

 井戸を掘る場所の選定は地質屋が行い、井戸からメタンガスを取り出す作業は生産屋が実施します。作井屋は地質情報を基に、どのような井戸をどのように掘ってガスを出せるように仕上げることが最適なのかを検討し、綿密な計画を立て、必要な資機材を調達し、準備万端整えて作業を実施します。

 国内では親しみを込めて“井戸掘り”と呼ばれることもあれば、海外ではその責任者は“Well Construction Manager”と敬意をもって呼ばれることもあります。

 海底で井戸を掘るためには、船の上から長さ1.4kmにもおよぶ数十トンもの重さの鉄のパイプをぶら下げることになりますので、船の上には高さ50mの巨大な櫓に、強力なウィンチとブレーキなど数々の複雑な装置が備え付けられています。150人以上の様々な国籍を持つ専門の技術者が24時間体制で坑井を掘削します。

 作井屋には、機械、電気、電子、流体、地盤工学の他に、船舶、環境、経理、契約、プロジェクトマネジメントなど様々な知識と経験が求められます。そして、多数の専門技術を持った会社からの作業員を束ねる必要があることから、高いコミュニケーション能力(日本語、英語など)が求められます。

専攻:工学部の機械工学系や資源工学系が多い。

フレアを背景にひと仕事を終えた船上にて

フレアを背景にひと仕事を終えた船上にて

地化学技術者(Chemist)

天然から採取してきた地層サンプルを用いて、中に含まれているハイドレートの化学的な性質を分析する研究者です。採取する場所によってハイドレートの成因や生成する温度圧力条件が違います。そのためハイドレートの結晶構造(どんな大きさ?どんな密度?)やガスの組成(メタン以外に何がある?)を詳細に分析します。分析結果は、資源としての量の推定やガスの生産条件の策定、さらにはハイドレートの成因解明に役立てられます。

 地下から天然サンプルを採取する人たちがいないと研究がはじまりません。また、天然サンプルだけでなく、人工的にハイドレートを合成して天然堆積物を模擬した試料を作り、限られた貴重な天然サンプルではできない実験(ハイドレート分解やハイドレートのでき方の観察)を行い、フィールドでのガス生産のための知見を取得します。もちろんハイドレート自身の原理原則を追い求めたりもします。

専攻:化学(分析化学・化学工学など)、地球科学などが多い

【コラム】

分析などの実験は1人で作業や解析することがほとんどなので、研究所では誰とも会話しない日も少なくありません。この職業は、研究を通して見つけた発見?(大げさ)や分析結果を【世界で初めて自分が知る(解る)ことができる】ラッキーな職業だと思います。

しかしながら、そのラッキーのためにはコンスタントに研究成果を論文として発表する自己努力、さらには研究所に空きポストがあるという大ラッキーも必要です。もちろんポストを得てからも論文(努力)を積み重ねなければ、一度乗った大きな流れについていけませんので常に自転車操業状態でペダルを踏み続けなければなりません。

ある意味専門職ではないので、大学でやってきたことに意味は無いとは言いませんが、自分の経験に拘らずいろんなジャンルに挑戦することが重要です。しかしながら「専門」職ではないと言いつつ、研究職を生業にするには自分のコアコンピタンスの確立と正しい自己認識が大事だと(今に振り返ると)思います。

自分が発表した発見・論文は、学術分野に組み込まれ・体系化され・アーカイヴされ次の大きな流れの一部となります。もしかしたら自分のアクションがゲームチェンジを起こせるかもしれません。そう考えながら日々研究を行なっています。

人工的に生成させたハイドレート結晶

人工的に生成させたハイドレート結晶

地質技術者(主に、三次元地質モデリング業務)(Geologist for 3D geological modeling)

地震探査データや坑井データ(物理検層やコアデータ)を用いた統合解釈作業を通じてメタンハイドレート層の貯留層性状評価を行い、貯留層の地質性状や物性情報を三次元的に可視化する三次元地質モデリング作業を行っています。構築した三次元地質モデルは、貯留層を模擬した格子(グリッド)上に各種貯留層物性が数値データとして定義されており、資源量評価やガスの生産挙動予測フローシミュレーションで使用する入力データになります。

専攻:地球科学(地質学、地球物理学)

【コラム】

 地質モデリングでは、限られたデータから貯留層性状の空間的不均質性をいかに再現・予測するか、が重要な課題になります。モデリングには様々なアプローチがありますが、対象貯留層の地質性状に加え、使用するデータの量や質、特性を考慮しながら、モデルの用途や目的に応じた最適な手法を用いる必要があります。私自身は地質技術者として仕事をしていますが、統合解釈やモデリング作業は、地質のみならず物理探査技術や油層工学などの幅広い知識が必要であり、異なる技術者とのコミュニケーション能力(歩み寄り)が求められる仕事でもあります。

 地質モデルは主に生産挙動予測のための入力データとして用いられますが、次の井戸を掘削する際の貯留層性状予測の基礎情報にもなります。限られたデータからの予測は不確実性を伴いますが、予測した貯留層性状は掘削結果で検証することができます。貴重な経験として今でも心に焼き付いているのは、第二回海洋産出試験の生産井掘削です。掘削前に約一年間、既存坑井や震探データから生産井位置の貯留層性状予測を行い、本番の掘削時に乗船して現場に立ち会いました。リアルタイムで取得される検層データをモニター越しににらめっこしながら、検証すべき主要な部分で予測通りの結果が出現した時の感動は忘れられません。

 地質モデルは新規取得データが追加される度に新たな知見を加えて更新されるものであり、モデリング作業は貯留層評価業務の続く限り永遠のテーマでもあります。

船上で取得された検層データの確認風景

船上で取得された検層データの確認風景

貯留層技術者(Reservoir Engineer)

 メタンハイドレートを含む地層を簡略化した貯留層モデルや数値シミュレータ、生産井や観測井で取得された圧力や温度のデータなどを用いて、主に貯留層内におけるガスや水などの動きを評価する技術者です。地質の専門家が主に貯留層の初期性状を評価するのに対し、レザバーエンジニアは貯留層の動的な変化を解析します。その他、地震探査手法を駆使して生産前後における貯留層の物性変化を捉えることを試みる物理探査の専門家や、地層変形や出砂などに関する知見を有するジオメカの専門家、坑内機器や生産設備といった生産に関連した専門家などと共に、データ情報を統合し、生産時における貯留層や坑井周辺で生じ得る様々な現象の統合的な解釈を進める仕事をしています。

専攻:油層工学、資源工学など

【コラム】

 メタンハイドレート層からのガス生産においては、地層中でのメタンハイドレートの分解やガスと水の流れのみでなく、地層を構成する砂の移動、地層の変形、熱の伝わりなど様々な現象を考える必要があると考えられています。しかし、我々は人工物ではない自然を相手にしていますから、地層の中での現象をまだ十分に理解しているとは言えないのかもしれません。現場で取得できるデータの量や種類には限りがありますが、それらのデータを組み合わせ、貯留層内や坑井周辺で生じている現象を想像しつつ、実際に生じた可能があるシナリオを追及していく作業はメタンハイドレートの研究開発における魅力のひとつだと思います。

 また、過去の生産試験の結果を踏まえ、次はどのような生産試験にするべきかという目的意識は大変重要であり、将来の解析作業までを見越した計画立案が求められます。生産試験中は海上や極地の現場で取得データの内容を確認し、生産試験後はそのデータを用いて解析するという、計画立案から解釈作業まで全てに関わらせてもらっています。地下における現象の理解と再現のみにとどまらず、生産挙動予測技術の信頼性の向上や安定生産技術の開発に尽力していきたいと思います。

データ解析作業イメージ

データ解析作業イメージ

生産システム関連

元々私はオフショア・リグと呼ばれる移動式掘削装置の上で勤務していましたが、2015年から5年ほど主に砂層型メタンハイドレート開発に関係する仕事を担当しています。具体的には、2017年に実施した第2回海洋産出試験で使用した坑内用生産システム機器、つまり電動水中ポンプやその制御装置、配管等の坑内機器類、いわゆる生産システムの心臓部にあたる機器類の設計から調達・設置・運用・管理までの一連の業務を担当しました。また、第2回海洋産出試験が終わってから現在までは、主に産出試験の結果判明した生産システム上の課題を克服するための研究業務に携わっています。例えば、海底下のメタンハイドレート層からメタンガスを取り出し、そのメタンガスを生産水と一緒に海上まで滞りなく送るためのシステムを構築するための研究を行っています。

【コラム】

私は大学時代に物理探査工学を専攻し、地下構造を推定するための技術について勉強しました。現在私が行っている業務は大学で勉強したことと直接関係が無いかもしれません。しかしながら、メタンハイドレート開発業務には様々な分野の専門家が関係していて、メタンハイドレート生産システム構築と一言で言っても、様々な分野の専門知識をシステムに反映させていく必要があります。今私が携わっている仕事では、私が過去に勉強したことや経験したことを活かすことができる機会があり、ある意味それが今の私の強みとなっていると言えるかもしれません。 メタンハイドレート開発関連業務の醍醐味と言えば、自分が現在携わっている仕事が、近い将来具体的な形となって出来上がり、メタンハイドレート開発に繋がっていく可能性があることだと思います。勿論それには大きな責任が伴いますが、同時に大きなやりがいを感じることができます。自分のやりがいが最終的にメタンハイドレート開発の発展に繋がれば、それこそまさに「最高」だと思います。

鉄管確認作業風景

鉄管確認作業風景

生産技術者(Production Engineer)

 メタンハイドレートの海洋生産試験の主要部分、すなわちメタンハイドレート層からメタンガスを安定的に生産し(取り出し)、試験後の解析を行うための流量や温度・圧力などの多数のデータを取得することを担当します。また、生産データを取得するために必要となる、セパレータ、安全装置や燃焼バーナー等の生産試験設備の設計や人工採油ポンプの設計を含む生産試験編成の設計も行います。

 地質屋から入手した水深、地層深度、地層の厚さ、地層の特徴、温度、圧力などの情報を基に、作井屋と協力しながら、どのような生産試験施設を用いて、どのようにメタンガスと水とを生産することが最適なのかを検討し、綿密な計画を立て、準備万端整えて作業にあたります。生産試験で取得した種々のデータは、主に貯留層エンジニアが解析を行います。

 ガスや水が、地層の中や井戸の中をどのように流れるのか、どのような生産試験施設を用いバルブをどう操作すれば、最適な状態で流すことができるのか、などの知識と経験が要求されます。

 作業は作井屋と共同して、専門技術をもった複数の会社の様々な国籍を持つ作業員に指示して行いますので、高いコミュニケーション能力が求められます。

専攻:工学部の資源工学系が多い。

  船内でのミィーティング風景

船内でのミィーティング風景

海洋生物学者(Marine biologist)

 私が在籍する部署は、石油や天然ガスの探鉱や開発に関係する研究・開発をおこなっており、研究職員のほとんどは、石油工学や地盤工学あるいは無機化学といった物理学・地質学ないし化学などを専門とする研究者です。そのなかで私の専門分野である「海洋生物学」は、極めて異質な職種になります。私の研究は、メタンハイドレート開発に伴い予想される自然環境への影響について、主に生物学的な側面から検討することにあります。例えば、海底面下にあるメタンハイドレートをガスとして生産するために海底に井戸を掘りますが、その際、海底面に堆積した堀くずがその場所に生息する生物を埋めてしまうことが考えられます。あるいは、メタンハイドレートからメタンガスを生産する際には多くの水(生産水と称します。)が発生しますが、この水を海洋に放出することを考えた場合にも、その周辺の海水中に生息する生物に影響を及ぼす可能性が考えられます。このように、どのような生物に、どのくらいの範囲で、どのような影響を及ぼす可能性があるかを事前に検討しておくことはメタンハイドレート開発を行う上で大切なことです。そこで、海洋生物学を専門とする私たちが調査を実施し、得られた生物情報を使い、様々な角度から検討を加えています。しかし、メタンハイドレート開発が想定される水深1,000mを超える深海域では、まだまだ未知のことが多いため、如何に深海環境の特徴を理解しながら、自然環境と調和のとれたメタンハイドレート開発が実現できるかについて日々奮闘しています。

専攻:海洋生物学

調査中に船舶に掲げる国際信号旗I旗(黄色地に黒丸)とR旗(赤色地に黄色十字)の組み合わせは「本船は海底調査作業(水中活動)に携わっている。本船より離れて徐行せよ。」を意味している。また、その下の黒い円形+菱形+円形のものは形象物と呼ばれ、この組み合わせは「操縦性能制御船」を意味しており、どちらも海洋調査の作業時に掲げ、遠くからでも視認できるよう、他の船舶が安全運航するためのルールの一つとなっている。

調査中に船舶に掲げる国際信号旗I旗(黄色地に黒丸)とR旗(赤色地に黄色十字)の組み合わせは「本船は海底調査作業(水中活動)に携わっている。本船より離れて徐行せよ。」を意味している。また、その下の黒い円形+菱形+円形のものは形象物と呼ばれ、この組み合わせは「操縦性能制御船」を意味しており、どちらも海洋調査の作業時に掲げ、遠くからでも視認できるよう、他の船舶が安全運航するためのルールの一つとなっている。



ここで紹介した以外にも、金属系、電気系といった分野もあります。
このように、砂層型メタンハイドレートの研究開発には、多くの技術者が関わっていて、お互いの知見を共有し周辺環境にも十分配慮しながら商業化の実現のためにたゆまぬ努力を積み上げているのです。

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